デンジャラス・ラン - 青森 学

誰を信じれば良いのか分からない観るものを疑心暗鬼に誘い込むストーリーテリングは見事だったと思う(点数 85点)


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舞台は南アフリカ、ケープタウン。
悪のカリスマである元CIA局員、トビン・フロスト(デンゼル・ワシントン)の悪の頭脳に翻弄される駆け出しのCIA工作員(ライアン・レイノルズ)。

トビン・フロストを収容していた隠れ家(Safe House)が何者かに襲撃され、内部情報をリークしている者がいるとフロストは仄めかす。
「よくやった。後はまかしておけ」という奴は裏切り者だとフロストは言う。その裏切り者は誰なのか最後で明かされるのでこの台詞にはとくに注意して観ることをお勧めする。

新米のCIA局員が出世欲に駆り立てられながらもフロストを通じてCIAという組織の全貌が見えて来て、彼を青二才から老獪な熟練者に育っていく過程が映画の見所でもある。

悪玉のスパイであるトビン・フロストはカリスマ性が有って大変良い。
正義という規範に束縛されず、自身の生存本能のみで行動する。それは人間を導く義務を忘れた神のようであり、悪魔的ですらある。
新米のCIA局員を翻弄し試すのはさながらメフィストフェレスのようであった。

ストーリーは一見、『トレーニングデイ』にあった悪徳警官と新米警官の関係を追奏しているよう見えるが、『トレーニングデイ』は正義をめぐって新旧の警官が対立するのに対し、『デンジャラス・ラン』はもはや正義不在の諜報の世界において「悪」の烙印を押された裏切り者の元CIA局員のトビン・フロストの行動を追うことで彼を再評価するところが異なる。

隠れ家を転々としながら未知なる追っ手に身の危険を感じながらも連行するトビン・フロストのほうがより危険という、前門の虎後門の狼というべき切羽詰まったスリリングな展開から目が離せない。
立身出世を望む若いCIA局員と諜報の世界の裏を知り尽くした元CIA局員の駆け引きが物語を牽引するのだが、隠れ家を転々としつつトビン・フロストの奸計に嵌まりながらもそれをまた出し抜く若手CIA局員との頭脳戦が面白い。

CIA内部に密通者がいるなか、孤立無援の状態で危険人物を護送する展開が非常にサスペンスフルだ。カーアクションや銃撃シーンと、なにかとアクションシーンが目立つ本作ではあるが、格闘する際に登場人物がどう行動すればいかにリアルに映るのかという、こだわりのある演出にも腐心しているようだ。そういった演出に裏打ちされた映像がこの作品に大きなリアリティを与えているのだろう。
物語はそのような緊張状態を維持したまま、疑惑の核心に突き進む。観終わった後は非情な諜報の世界に嘆息させられた。

青森 学

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