デュプリシティ ?スパイは、スパイに嘘をつく? - 福本次郎

騙したつもりが騙されて、罠にかかったフリをして罠にかける。監視・尾行・盗聴・ハッキング・偽装、手に汗握る攻防戦はラストまで一気に突っ走る。ハイテクよりマンパワーがものを言う情報戦の基本が守られているのがうれしい。(70点)

デュプリシティ ?スパイは、スパイに嘘をつく?

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 騙したつもりが騙されて、罠にかかったフリをして罠にかける。自分しか信じることができない産業スパイの世界、そこで生き残れるのは絶対の信頼をおける仲間を持った者だけだ。味方が敵のスパイだったり、敵のスパイが味方だったり、人間関係は複雑に絡まり、解決の糸口はなかなかつかめない。監視・尾行・盗聴・ハッキング・偽装、そういった仕掛けがさらなる仕掛けを呼び、手に汗握る攻防戦はラストまで一気に突っ走る。ハイテクを利用しつつも、結局はマンパワーがものを言う情報戦の基本が守られているのがうれしくなる。

 サニタリー用品を扱うエクイクロム社に工作員として雇われた元MI6諜報員のレイは、ライバル企業のB&R社に潜入しているスパイが、かつて煮え湯を飲まされた元CIAのクレアだと知り激怒するが、クレアはB&Rが画期的な新製品を開発したという証拠をレイに届ける。

 レイとクレアは元から手を組んでいるのだが、彼らとてお互いに対して100パーセント信用しているわけではなさそう。レイが旅行会社の女子社員をナンパし、その女子社員を尋問するクレアの苦虫を噛み潰した表情は明らかに嫉妬とレイに対する怒りを押し殺している。彼女はレイを愛する気持ちを踏みにじられた気分。一方のレイも出会いでクレアにハメられているだけに、クレアを愛しているのにいつかまた足元をすくわれるのではないかという不安を捨てきれない。他人のために命を投げ出すことができないのはスパイの習性、それが染み付いた2人の距離感にハラハラさせられる。

 機密を入手するだけでなく、わざと相手にガセネタをつかませてかく乱する。これぞまさに諜報の醍醐味だ。クレアがB&Rから新製品の化学式を盗み出し、レイが横取りする。しかし、それ自体が手のひらの上で踊らされていただけという、さらに大きな虚構。脚本はその仕組みを小出しにして、観客をも手玉に取ろうとする。欺瞞と裏切り、相次ぐどんでん返し、それらの要素を、冒頭のCEO同士の幼稚な喧嘩以外はまったく暴力に頼らずスマートに描ききったところに非常に好感が持てた。

福本次郎

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