◆現代の最高レベルの特撮技術で、こんなリアルな残酷シーンを作るのは、もはや犯罪だ(85点)
マトリックスのアクション監督デヴィッド・エリスが送る、ホラー映画。
いやはや、とてつもなく悪趣味な映画である。これほどのホラー映画は、そうそうお目にかかれまい。『デッドコースター』がどういうタイプのホラーかというと、超高画質のリアルなCGで、人間が事故死する場面をスローでバッチリ見せるといったタイプのもの。
世間が、『ザ・リング』だの『ボイス』だの『呪怨』だのと、心理的な和風の恐怖映画に夢中になっているなか、その正反対に位置する『デッドコースター』は、実に新鮮。いいかげん、あの手のグジグジした恐怖映画に飽きが来ていた私にとっては、この映画は久々に観た、現代版悪趣味スプラッターとして、たいへん楽しめた。
しかも私は、六本木GAGAの試写室でこの作品を見た直後、そのあまりの衝撃に、半ば放心気味で、数分間、椅子の上でフリーズしてしまった。その原因は、この映画が、やたらとリアルなCG技術をふんだんに使って、直射日光がさんさんと輝く明るい場所で、人が死んでいく場面ばかりをバッチリ描いていたためだ。
普通は、そういう場面は真っ暗闇で、血糊や効果音、カット割りでごまかしながら描くものだが、『デッドコースター』にはそういう小細工は一切無く、「さあみんな、残酷シーンが始まるよ! スローでやるからよく見てね!」といわんばかりに、堂々と観客に見せるのである。映画文法を力技でねじふせるような勢いが、見ていて気持ちいい。
おまけに本作は、日常の何気ないシーンと、人体破壊残酷シーンの境目がない映像作りになっている。たとえば、普通に街を歩いている人が、突然グチャっと死んだりするので、客は一瞬たりとも油断できないのである。
さらに性格の悪い事に、不安げなBGMが鳴り響き、「やべー、あいつ絶対アレに刺さって死ぬよ?」と客がびくびくして身構えていると、わざとそのタイミングをずらして、客がホッと一息ついた瞬間に唐突に死ぬ。
こうしたショックシーンが、手を変え品を変え、変化球や直球をおりまぜて、90分間休みなく我々を襲う。『デッドコースター』は、私前田が皆さんに薦める、今週の隠れたおトク作品である。「絶対ヤバイよこれ、間違いなくこのまま行ったらマズイ!」と、猛烈な不安感を漂わせる、冒頭のドライブシークエンスの素晴らしい出来映えだけでも、1800円分の元は取れる。
主演の女の子二人もとってもカワイイし(これはホラー映画の重要な要素だ)、「死の運命と戦う」というアイデアも秀逸だ。おかげで、インチキくさいエイリアンや、CGバレバレなクリーチャーにいつも興醒めする方でも、十分に楽しめるショックホラーとなっている。サウンド・デザインも素晴らしいので、なるべく設備のいい劇場で楽しむといいだろう。
強烈なショックシーンの数々は、実にエグイが、心理的に残る後味の悪さは全くないので、ぜひ、オトモダチを誘って、気軽におでかけあれ。
なお、原題を見ると、これは某ホラー映画の続編であるが、別に前作など見ていなくても大丈夫だし、現に配給側も(前作とは無縁の)こうした邦題をわざわざつけているわけだから、私としても今回は、あえて前作との比較批評はしなかった。前作も相当面白いのだが、これから見てもまったく問題は無い。
(前田有一)