デス・プルーフ in グラインドハウス - 福本次郎

◆カーチェイスの原点に戻り、スタントの神髄を見せる変幻自在のカメラワークは臨場感たっぷり。スタントマンが命を張って見せるスピードとスリルを、より大いなる衝撃をもった新たな表現の可能性を追求する映像で観客を圧倒する。(80点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 大排気量の自動車同士がフルスロットルでボディをぶつけ合い、パワーを競い合う。カーチェイスの原点に戻り、スタントの神髄を見せることにこだわった変幻自在のカメラワークは臨場感たっぷりだ。狂気に駆られて追うものとハンディを背負って追われるもの、緊迫したつばぜり合いは一瞬も目が離せない。映画は、CGがなかった時代の、スタントマンが命を張ったスピードとスリルを完全に再現する。いや、より大いなる衝撃をもって新たな表現の可能性を追求し、圧倒的に凌駕している。そこではタランティーノの映画への愛が見事に娯楽として昇華している。

 テキサス州のバーひとりたたずむスタントマン・マイクは、ナンパした女をスタント用の特別仕様を施した車で殺した上に、女たちが運転する車に自分の車を正面衝突させ全員殺す。その後、テネシー州に現れたマイクは、新たに映画の女性スタッフ4人組に目をつける。

 ほとんど意味のないガールズトークが延々と続き、なかなか進展しない物語にうんざりしてきたときに予想もしない方法で観客の度肝を抜く。カート・ラッセル扮するマイクはいかにもイカれた中年男。その狂気の牙をいつ剥きだしにするのか散々気を持たせた挙句に、自分も死にかねない方法で殺人を犯すのだ。それは生と死の間を綱渡りするような究極のエクスタシー。しかし、スプラッターと思わせておいて、後半はがらりと趣を変える。

 ボンネットに座って70年型ダッジ・チャレンジャーを猛スピードで走らせるという、クレイジーな計画を持ったスタントウーマンが実行に移す。それだけでも手に汗握るが、そこにマイクが現れ、彼女たちが乗った車にぶちかましをかけて来るのだ。ボンネットに人を乗せたまま全速で逃げ、マイクの攻撃をかわさなければならない。それは今まで見たこともないようなアドレナリン大噴出のカースタントの新境地だ。70年代風のクレジットやフィルム、サウンドまでその雰囲気をかもし出すが、女性がアクションをこなし、最後には悪党を叩きのめすという現代風の味付けが、映画をさらにエキサイティングなものにしていた。

福本次郎

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