人間ドラマとサバイバル劇こそが本作の最大の見所なのである(点数 65点)
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フランス出身の鬼才サヴィエ・ジャン監督によるシチュエーション・スリラー。
ニューヨークが原因不明の大爆撃によって崩壊。生き残った男女9名(内訳=男6人、女3人)はアパートの地下シェルターに逃げ込み、ここでしばらく留まることを決意する。だが、食料や水は次第に足りなくなり、不安と焦燥が彼らを追いつめ、価値観の相違や他者への不信感から苛立ちと緊張の日々が続く。そんな中、防護服に身を包んだ武装集団が扉をこじ開け、彼らを襲撃するのであった……。
マイケル・ビーン扮するミッキーの所有物である地下シェルターの入り口は外側から溶接され、脱出を封じられてしまう。そんなシェルター内での人間模様や心理描写が緊迫感を漂わせて描かれ、追いつめられた9人の男女の自我、狂気を次第に炙り出し、観る者に恐怖と絶望を味わわせる。この人間ドラマとサバイバル劇こそが本作の最大の見所なのである。
また、突如出現した防護服の武装集団との対決、痛々しい残虐バイオレンスによるグロ描写といったつい目を覆いたくなるような刺激的なシーンも用意されており、後半では狂気に満ち溢れたバイオレンスが絶頂し、観る者を愕然とさせる。派手さは抑え気味ではあるものの、このような飽きさせない作りが施されている点は、大いに認めたい。
ニューヨーク崩壊の原因や何者の仕業かということ、少女を実験サンプルに利用するべく拉致する武装集団の動機やその存在といったことが一切説明されず、大きな疑問点となる。でも、そんなことを気にせずに劇中での出来事をしっかりと観ているだけでも面白さは堪能できると断言したい。
(佐々木貴之)