テラビシアにかける橋 - 福本次郎

イマジネーションの世界を作り上げるにも、子供の頭には自分の見聞を元にしたことしか浮かばない。早く走れたり、軽々と木に登れたりといった小さなスケール。そこでの体験が現実世界とリンクせず中途半端な関係しか生まない。(40点)

 イマジネーションの世界を作り上げるにも、子供の頭には自分の見聞を元にしたことしか浮かばない。すごく早く走れたり、軽々と木に登れたり、巨大リスをワンパンチで倒したりといった非常にスケールの小さい身近な空想。それは大人が考えた壮大なファンタジーとは違い、日常の延長でしかない。冒険を通じて成長していくのではなく、ちょっとだけスリルを味わうが安心して過ごせる場所だ。だからこそ現実世界での成長が空想世界に広がりをもたせていく。義務を果たし責任を持ち広い世界を知ることで、魔法の力も強くなっていくのだ。

 いじめられっこのジェスのクラスにレスリーという少女が転校してくる。レスリーは家も隣、やがて彼女が語る物語に心魅かれたジェスは、ふたりでテラビシアという架空の国を森の奥に作り上げていく。

 レスリーと付き合ううちにジェスは自分の絵の才能に気づく。レスリーのおとぎ話に具体的な形を与えるジェス。テラビシアはふたりの共同作業、森の奥にツリーハウスを作り放課後を過ごすようになる。ところが、ジェスはレスリーの生き方には感化されるのだが、テラビシアでの体験が現実世界とリンクせず、非常に中途半端な関係しか生まない。なにより森の中の怪物がしょぼいのが致命的。せめてジェスがテラビシアでの出来事をきちんとした絵で見せてくれれば納得できたのだが。

 しかもレスリーが川に落ちて唐突に死ぬ。その川にジェスはきちんとした橋を架けてレスリーを弔うのだが、それはふたりだけのテラビシアに他人の侵入を許すことだ。実際、失った鍵を取り戻し、偉大な美術に触れ、架橋作業をひとりでやり遂げた後のジェスが見たテラビシアは、非常に細密な魔法の国になっていたが、ジェスは妹をテラビシアの姫にしてしまうという不可解な終わり方。魔法の国ならばレスリーを生き返らせてもよかったのではないだろうか。唯一、無理解ながらもジェスのことを見守っている父親の愛情だけは共感できた。

福本次郎

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