疑問が多い問題のラストシーンですが、私はストレートに感動しました。(点数 80点)
(C)2011 GROVE HILL PRODUCTIONS LLC All Rights Reserved.
前回紹介した『メランコリア』は世界の終末の映画でしたが、
今回の『テイク・シェルター』も同様に世界の終末を暗示させる作品ですが、
その雰囲気は大きく異なります。
ボーリングの機械工のカーティス。
慎ましやかな生活ではありますが、妻と娘の三人で幸せに暮らしていました。
しかし、嵐と黄色雨の夢を毎日のようにみるようになり、
やがてそれは「世界破滅」のメッセージのように思えてくるのです。
嵐から身を守るために強固なシェルターを作り始めるカーティス。
しかし一方で、彼の行動は逸脱し、社会生活に支障をきたすレベルへ・・・。
彼の夢は「神の啓示」なのか? それとも、精神病を発病してしまったのか?
世界破滅に備えてシェルターを作る男。
すぐに、「旧約聖書」の「ノアの箱舟」の話を思い出し、
聖書的なメッセージが込められているのかと思いますが、
意外なことに聖書はあまり関係ありません。
カーティスは、統合失調症を発病したのか、それとも神の啓示なのか?
そこが最後の最後までわからない、緊迫した心理サスペンスに
なっているのです。
おそらく最後まで見ても、わからないか、疑問を残す人も多いでしょう。
私は、これを見て、ホラー映画の傑作『ローズマリーの赤ちゃん』を
思い出しました。
引っ越してきた隣人は悪魔教の崇拝者なのか?
それとも、主人公の妊娠中の精神不安定、妄想にすぎないのかが
最後までわからない、サスペンスホラー。
それに似た雰囲気を持っています。
精神病かどうか?という二者択一で映画は進んでいくのですが、
後半になるにしたがい、意外なテーマが浮かび上がってきます。
それは、「家族」の大切さです。
精神病であろうと、神の啓示であろうと、
最後に頼りなるのは「家族」。
家族のつながり、そして支え合いしかないのだ、という。
それって、心の病に限らず、
全ての危機を乗り越えるヒントではないでしょうか。
疑問が多い問題のラストシーンですが、私はストレートに感動しました。
(樺沢 紫苑)