ツレがうつになりまして。 - 福本次郎

ツレを通じて晴子もまた成長していく姿がいとおしくなるほどの温かさに包まれた作品だ。(点数 50点)


(C)2011「ツレがうつになりまして。」製作委員会

痛かったり辛かったりといった肉体的な苦しさではなく、頭に霞がか
かって思考力が衰え何をするにも体がだるい。映画は、そんな夫と暮
らす妻の視線で、うつ病患者との距離の取り方を手探りで模索する。
薬で気分がよくなる日もあるが、些細な言動で落ち込むときもある。
不眠が続くと思えばひたすら眠ったりする。ただそっと見守るしかな
い、それでも夫婦ずっと一緒いられるささやかな喜びがそこには満ち
ている。

【ネタバレ注意】

売れない漫画家・晴子はツレと呼ぶ夫が過労からうつ病になったと知
り、会社を辞めさせる。病院に診察に行く以外は家にこもりっきりに
なるツレに晴子も付き合うが、晴子は家計を支える必要に迫られる。

物語はツレの症状をあくまで晴子の目に映る客観的事実ととらえ、決
してツレの主観で描こうとはしない。ツレを演じる堺正人は目じりや
口元に複雑なしわを寄せて心境を表現するが、あえてほとんど感情を
出さずに心の重さを際立たせる。その抑制のきいた映像はむしろ退屈
だが、平凡な日常こそがうつ病の最良の薬なのだ。

ツレの代わりに稼がなければならなくなった晴子は、思い切って編集
者に何でもいいから仕事をくれと頼み込む。晴子に欠けていたのは実
はマンガに対するハングリーさで、描きたいものがない漫画家の作品
など読者は求めていないことに初めて気づく。ツレを通じて晴子もま
た成長していく姿がいとおしくなるほどの温かさに包まれた作品だ。

福本次郎

【おすすめサイト】