◆アクションより、キャメロンのダンスがすごい(75点)
70年代のテレビシリーズをもとに映画化したアクション映画のPART2。製作側にしてみると、前作も大ヒットしたので、テレビシリーズのファンを含めて、相当幅広い年代を劇場に呼べるという、大ヒット確実な安全パイの典型である。
のっけから最後まで、恐るべきハイテンションを持続する映画である。副題のフルスロットルというのは、まさに本作にふさわしい。
本作の見所は、ただ一点、キャメロン・ディアスに尽きる。前作もそうだったが、本作はさらに壊れっぷりがエスカレートしており、もはや芸術品の域に達している。
登場シーンから、観客はそのあまりのバカさに爆笑し、「なんだよその服は!」と、スクリーンに突っ込みたくなる事うけあいである。そこから先、彼女は出ずっぱりで、笑いとアクションを提供してくれる。
なかでも、MCハマーが流れた途端、とち狂ったように腰を振りながら踊り出すシーンは最大の見所だ。あまりのインパクトに、私はこれを、『壊れキャメロン尻ダンス』と密かに命名する事にした。
彼女の圧倒的な存在感に比べると、他の出演者は皆エキストラみたいなものである。まあ、ルーシー・リューやドリュー・バリモアなどはそれでもいいと思うが、気の毒なのは、キャメロンの比較対象となる、敵役のデミ・ムーアである。
ルックスも存在感も、彼女の凋落ぶりは著しい。顔のアップなど、どことなく不自然で見ていられない。ビキニ姿も、頼むから隠してくれといいたくなるほどで、痛々しい。彼女自身より、両手に持っているゴールドの巨大拳銃(デザートイーグル)のほうが目立つというのがつらい。
このように、役者としての勢いの差を、劇中でもみせつけられているような状態だから、残念な事にクライマックスの対決が盛り上がらない。戦う前から決着は付いているという印象なのだ。
また、これは宣伝側への意見だが、最大のスペクタクルシーンを、予告編で流しまくりというのはいただけない。劇場版、テレビ版の予告編を一度でも観た方は、驚き半減、ご愁傷さまである。なにしろ本編には、あれ以上の大規模な見せ場がないのだから。予告編を運悪く見てしまった方は、あまり過大な期待はしない方がよろしいとアドバイスする。
とはいえ、『マトリックス』と同じアクション監督が指導する動きは、充分見応えがある。決して退屈はすまい。
挿入曲の数々も、雰囲気にピッタリでとてもいい。パロディが多い点は、あまりに品位が下がるし、安直過ぎて好きではないが、まあ、あまり気にせず見ればいいだろう。
この映画のヒロインたちは、まったく“女”を意識させず、色っぽさなど微塵もないが、そこがいい。だから、男女どちらから見ても爽快で、楽しめる映画になっている。エンドロール後にも映像が流れるので、最後まで席を立たず、たっぷり楽しんできてほしいと思う。
(前田有一)