チェイサー - 佐々木貴之

◆アクション映画としての面白さすら感じられる(80点)

 10ヶ月に21人を殺害した連続殺人犯、ユ・ヨンチョル事件に基づいた韓国製クライム・サスペンス。

 デリヘルの元締めをしている元刑事のジュンホ(キム・ユンソク)。彼の店から次々とコンパニオンが失踪していく。その頃、街では猟奇的な連続殺人事件が多発していた。ジュンホは、コンパニオンたちが残した携帯電話の番号“4885”からヨンミン(ハ・ジョンウ)という客を割り出す。ジュンホは、必死の追跡の末にヨンミンを捕らえる。だが、ヨンミンは逮捕されて自供したものの証拠不十分で釈放されてしまう。ジュンホは、ヨンミンの餌食となった店の女ミジンを救うべく執念を燃やして再びヨンミンを追跡する。

 ヨンミン宅の浴室が犯行現場であり、気味悪さ満点のジメジメ感がスクリーンから存分に感じられ、これだけでもホラー映画のワンシーンのようで非常に印象的だ。ヨンミンの犯行手口が何よりも強烈だ。獲物にしたデリヘル嬢ミジンの頭をノミとハンマーを使って叩きつける。そして、ドス黒い血が流れる。この残酷極まりない描写が存分に恐怖を感じさせる。また、衝撃的なバイオレンス描写として仕上がっており、観る者を震え上がらせるほどだ。

 ジュンホがヨンミンを追うシーンは、アクション映画としての面白さすら感じられる。スピーディーかつテンポ良く描かれ、BGMがさらに盛り上げてくれる。この追跡の末にジュンホはヨンミンを捕まえ、ボコボコにする。ここでバイオレンスアクションとしての面白さが味わえる。

 バイオレンスや追跡シーンだけが本作の面白さではない。笑いを狙っていないコミカル描写が随所に散りばめられ、これが観る者をクスっとさせる。また、ジュンホとヨンミンの餌食となった女の娘とのロードムービー風の描写や、頼りない警察側も印象深い。とにかく様々な面白さが取り入れられているのである。

 クライマックスはジュンホとヨンミンの男同士の壮絶な死闘が繰り広げられる。お互いに殴り、蹴り、そして武器を手にして闘う。このバトルシーンでもバイオレンスを徹底的に追求した凄まじい迫力を魅せつけ、面白さを一気に爆発させたのである。

 監督は新鋭ナ・ホンジ。とてつもなく恐ろしすぎる実話を娯楽性を高めた作り方と緊迫感を漂わせた重厚な作風で面白く魅せつけることに成功したのである。

 既にハリウッドでのリメイクが決定しており、オリジナルの面白さを超えられるかが気掛かりだ。

佐々木貴之

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