◆“ド肝を抜かれる”ほどの目新しさはないものの、「みんな違って当然」という当たり前のことを教えてくれるあたたかい物語(50点)
国際結婚(カップル)に苦労はつきもの。“外国人なダーリン”を持った女性の日常をユーモラスに描くストーリーだが、恋愛の悩みは普遍的なので共感できる。語学オタクの米国人トニーと漫画家を夢見るイラストレーターのさおりは、ひょんなことから付き合いはじめ、同棲するようになる。トニーの外国人目線の素朴な疑問や思わぬ言動に笑ったり悩んだりするさおり。二人はやがて真剣に結婚を考えるようになるが、さおりの父親の反対や、日常生活の摩擦から心がすれ違い始める…。
同名の人気コミック・エッセーを原作とする本作の面白さは、カルチャーギャップだ。改めて知るヘンテコな日本語や習慣などが笑えるのだが、語学オタクのトニーが漢字の美しさに感激したり、日本人らしさと考えている礼儀正しさなど、忘れがちなニッポンの良さをも教えられる。日本人の欧米コンプレックスを指摘する耳の痛い描写もチラリ。だが、お互いの欠点やこうしてほしいと思うことについてきちんと向き合わなければ、わだかまりが生じることは、アメリカ人だろうが、日本人だろうが、関係ない。やがて、ずっと一緒にいたいという気持ちから二人が本当に大切なことに気付いていく展開はセオリー通りで、安心して見ていられる。乗り越えるツールはただひとつ、思いやりだ。気になるのは、さおりがアメリカに行ってからの描写が安易すぎること。今までトニーが日本で味わってきた苦労を、さおりが異国の地で実感する描写があれば良かったのだが。華やかに見える国際結婚も実は苦労の連続なのだが、さおりとトニーという根っから前向きな二人にかかると、苦労さえも笑い話に思える。“ド肝を抜かれる”ほどの目新しさはないものの、「みんな違って当然」という当たり前のことを教えてくれるあたたかい物語だ。劇中に原作者とダーリンがカメオ出演しているので探してみるのも楽しいだろう。
(渡まち子)