◆漫画家を目指すイラストレーターの女性と、語学オタクの米国人が結婚するまでの奮闘を描くコメディー。国際結婚に限らない、普遍的な家族の物語になっているのが良かった(68点)
タイトルからして当然、国際結婚にまつわる様々な困難を乗り越えて結ばれるカップルの話だと思うだろう。ところが本作には、国際結婚に特有の困難は、ほとんど描かれていない。もっと普遍的な家族の物語になっている。そこがとても良かった。
漫画家を目指すイラストレーターのさおり(井上真央)は、語学オタクの米国人ライター・トニー(ジョナサン・シェア)と結婚を考え、同棲を始める。さおりの母(大竹しのぶ)や姉(国仲涼子)はトニーを気にいるが、父(國村隼)は「国際結婚なんて許さない」と反対する。さおりは父が反対していることをトニーに言えなかった。さおりが漫画家としてデビューした直後、父が倒れる。
原作は実際に米国人と国際結婚している小栗左多里が、自らの体験を描いたコミックエッセイだ。そのため、トニーが日本語に疑問を持ったり、感動したりするポイントが、「作り物」の感じがせず、リアルで面白い。「『やれああしろこうしろ』の『やれ』って何?」「『ぶん殴る』って、なんで『ぶん』なの?」「抜かれるなら、度肝がいい!」など、原作者の夫が本当に言った言葉が基になっているのだろう。着眼点が(当たり前だが)外国人らしくて、「なるほどなあ」と思わせる。
そして、さおりとトニーがすれ違っていく原因が、「国際結婚」特有の文化の違いなどではなく、実に些細なことであるのがいい。洗濯物の干し方や食器の洗い方なのだ。さおりは不満に思っても、「せっかくやってくれているのだから」とトニーに言えない。トニーにとっては「なぜ言ってくれないのか」とそれがまた不満になる。相手が外国人だから起こるわけではない。他人と暮らした経験がある人なら、多かれ少なかれ、誰でも思い当たるだろう。こうしたエピソードがあるからこそ、全体としては他愛のない話であっても、主人公に素直に共感できるのだと思う。
気になったのは、ところどころでドラマが中断し、本物と思われる国際結婚の夫婦たちが登場し、インタビューに答えるという構成。この部分はドキュメンタリーのようになっていて、ドラマにリアリティーを与えたかったのかも知れないが、かえって邪魔に感じられた。また、トニーが仕事をしている場面がほとんど描かれないのも違和感があった。家事をしている場面ばかりで、外で何をしている人なのか、よく分からないのである。
主演の井上真央は、テレビドラマでの演技が好きでなかったが、本作ではとても魅力的に、輝いて見えた。明るい頑張り屋の役柄が合っていたのだろうか。意外に(と思うのは私だけなのかも知れないが)、巨乳でもあった。
(小梶勝男)