ダレン・シャン - 福本次郎

◆人の血をすする悪の権化でもなく、本能に苦悩する理性でもなく、人間と折り合いを付けて共存しているバンパイア。人間の敵ではなく、見世物の舞台に活躍の場を求めるあたりが、善悪の価値観が一元的でなくなった21世紀的だ。(60点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 人の血をすする悪の権化でもなく、体内に潜む本能に苦悩する理性でもなく、きちんと人間と折り合いを付けて共存しているバンパイア。超人的な力が必要な時だけ少しだけ人間の血を盗み、むやみに仲間を増やそうとはしない。そんな、永遠の生を運命と受け入れ、人目につかないようにひっそりと暮らしている姿が健気。もはや人間の敵ではなく、フリークスとして見世物の舞台に活躍の場を求めるあたりが、善悪の価値観が一元的でなくなった21世紀的だ。人間対バンパイアの対立ではなく、バンパイア界でのタカ派とハト派の主導権争いという視点も斬新だ。

 親友のスティーブと共にフリークショーを見に行ったダレンは、毒クモを盗み出す。その毒クモがスティーブを刺してしまい、彼を救うためにダレンは半バンパイアとしてバンパイアのラーテンの弟子となる。ダレンは家を離れてフリークスのキャンプで暮らし始める。

 外見や能力ゆえ人間界で異端視され心に傷を負っているが、キャンプではそんな自分を受け入れてくれる。ここにいれば安心というダークだがどこか安らぎのあるキャンプと、住人たちのキャラクターが濃やかに描かれていて楽しい。ダレンはそこで下働きをしながらバンパイア修行を積む。時折里心が芽生えたりもするが、レベッカという尻尾のある少女と恋に落ちたりと、両親に愛される優等生の生活を捨てても結構楽しくやっている。一方、スティーブは武闘派吸血鬼・バンパニーズの同胞になる。2人の未来をもてあそぶスキンヘッドの大男・タイニーが、奇妙に不気味な作品世界を象徴している。

 その後、ダレンはバンパニーズとの決戦に赴くが、スティーブに圧倒的な差を見せられ、自身もレベッカの血でパワーを得る。人間だったころの家族と友人を捨て、新たな人生を歩み始めるダレンの本格的な冒険はこれから始まる。この作品ではとりあえず主要登場人物の紹介とダレンが半バンパイアになった過程を明示するのみで、バンパニーズのリーダーとなるスティーブとの宿命の対決が今後待ち受けているのだろう。。。

福本次郎

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