ダラス・バイヤーズクラブ - 樺沢 紫苑

人は「死」を前にして、はじめて「命」のありがたさを知る(点数 90点)


(C)2013 Dallas Buyers Club, LLC. All Right

アカデミーで主演男優賞など3部門を受賞した、
『ダラス・バイヤーズクラブ』。
見どころは、3つ。

一つ目のポイントは、「生き甲斐」。

1985年、エイズの嵐が吹き荒れ、
まだ有効な治療薬がなかった時代。

電気技師のロンは、ドラックとセックスに溺れる
自堕落な生活を送っています。

生きる目的も何もない、その日暮らしの生活。
そんなロンが、ある日突然、HIV陽性と診断され、
余命30日と宣告されます。

最初は絶望するものの、非承認薬を求めて
メキシコにわたり、いろいろな薬を試しながら、
なんとか生きようとあがきだす。

最初は自分のための薬が、薬を密輸すれば
大儲けできると思いついたロンは、
無認可の薬やサプリメントを売る
「ダラス・バイヤーズクラブ」を設立。

そこに、薬を求めるエイズ患者が殺到するのです。
そして、最初は金儲という私利私欲が目的のはずが、
次第に「たくさんのエイズ患者の命を救いたい」
という崇高な目的へと変化していきます。

病気になる前のロンには、覇気がありません。
何のために生きているかわからない。

しかし、HIV陽性とわかり、「ダラス・バイヤーズクラブ」
というビジネスをスタートしてから、
目が輝きだすのです。

彼は、死の淵の中で、「生き甲斐」を見つけた!
生きる目的、生き甲斐があってこそ、人は輝くのです。

ポイント、2つ目は「迫真の演技」。

マシュー・マコノヒーが主演男優賞、
ジャレッド・レトが助演男優賞と演技部門で
二部門のアカデミー賞を受賞した本作品。
やはりその演技が大きな見どころです。

マシュー・マコノヒーは、エイズ患者を演じるため
21キロにおよぶ減量を達成して役作りに挑戦。

ゲイのエイズ患者を演じるジャレッド・レトは、
女性そのものとも言える、身のこなしや表情に引き込まれます。

ポイント、3つ目は「薬」。

有効なエイズ治療薬がなく、HIV陽性を告知されると
絶望するしかなかった時代。

AZTという新薬が開発されるわけですが、その薬は毒性が強く、
むしろ患者の命を縮めかねないものでした。

薬の承認をめぐって、製薬会社、政府機関、病院の癒着や
利権の問題が描かれます。

実はこの映画、政府機関や製薬会社と戦った実在の人物
ロン・ウッドルーフの実話を元にした物語。

製薬業界や医療現場の裏側を描いた社会派映画でもあるのです。
新薬の開発、薬の副作用、産官学の癒着の問題などは、
そのまま現在にも受け継がれているわけで、
30年前の「過去」の話と見過ごすわけにはいきません。

日本人にとって「エイズなんて自分に関係ない」と
全く人ごとに思うでしょうが、日本人のHIV陽性者、
エイズ患者はドンドン増えているという現実があります。

HIVはどうやって感染するのか、
エイズについて知るという意味においても、
是非、見ていただきたい一本です。

樺沢 紫苑

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