ダブル・ミッション - 福本次郎

◆戦うべき相手は襲い掛かってくる悪党よりも、言うことを聞かない反抗期の子供たち。「体は小さくても精神年齢は大人」と背伸びしている少年少女の気持ちが、ジャッキー・チェンのコミカルにデフォルメされた動きに反映される。(50点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 戦うべき相手は大勢で襲い掛かってくる悪党よりも、言うことを聞いてくれない反抗期の子供たち。米国白人女性の子守りをする主人公が、「中国人のダサイおっさん」という彼らの偏見を取り除き、尊敬を勝ち取るまでを描く。父親に捨てられたとひねくれている長女、生意気で嘘ばかりつく長男、そしてまだやんちゃ盛りの次女。「体は小さくても精神年齢は大人」と背伸びしている少年少女の気持ちが、ジャッキー・チェンのコミカルにデフォルメされた動きに反映される。彼のフィルモグラフィで、ここまで子供を対象にした作品は初めて見た。

 CIAのスパイ・ボブは身分を偽って隣人のジリアンと付き合っている。ある日ジリアンの留守に3人の子を預かり面倒をみる羽目に。そこで長男のイアンが犯罪組織の極秘データをダウンロードしてしまい殺し屋軍団に命を狙われる。

 派手なアクションに笑いをまぶすジャッキー流はここでも健在。アイデアを凝らしたシチュエーションとさまざまな小道具を使って遊び心をくすぐってくれる。往年のキレやスピードはとっくになくなっているが、それでも何とかファンを楽しませようとするサービス精神は少しも衰えていない。まず、まだ事情が呑み込めていない幼い次女のノーラを抜群の身体能力で、スーパーヒーローに憧れるイアンを秘密兵器で手なずけ、いちばん難しい年頃の長女・ファレンは刺客から守り肉体的な強さ見せて信頼を得ていく。ボブに明確な父性を意識させることで、映画はファミリー向けになっている。

 一方で、格闘シーンはどこか子供の空想のようなのどかさが漂い、緊張感に乏しい。プロローグの製油所での闘いのみ、金属製の階段やむき出しの梁やパイプを使った立体的な動きに目を奪われるものの、その後はギャグ漫画を見ているよう。パンチやキック、棒術から梯子、椅子や自転車まで駆使して並みいる敵を倒すのだが、そこにはもはや暴力の血生臭さや肉体の痛みはまったく伴わない。そのあたり、大人の観客には物足りなく感じられるのではないだろうか。。。

福本次郎

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