◆過去のジャッキー作品へのオマージュをたっぷり詰め込んだ演出が、長年のジャッキーファンへのプレゼントのようだった(55点)
香港のスター、ジャッキー・チェンのハリウッド進出30周年を記念して作られた、アクション・コメディーは、緊張感はないが安心して見ていられるのが嬉しい。表向きはさえないセールスマンだが、実は中国から出向しているCIAの凄腕エージェントという二つの顔を持つボブ。隣に住むシングル・マザーのジリアンとの結婚を考え、危険な任務であるスパイ業からの引退を決意していた。なかなかなついてくれないジリアンの3人の子供たちの面倒をみているとき、子供の一人がボブのパソコンからロシア当局の秘密データをダウンロードしてしまう。やがて彼らは巨大な陰謀に巻き込まれてしまい…。
冷蔵庫やフライパン、自転車など、身近な道具を上手く使った見事な動きのアクション。親しみやすい笑顔のジャッキー・チェンの持ち味を十分に生かした本作は、子供や動物を相手にした創意工夫に満ちた動きで笑わせ、恋人の子供たちと絆を育む過程で家族愛を描いてホロリとさせる。子供のいたずらが発端で起こる大事件は、あくまでユルいテイストの“大ピンチ”。ロシア人の悪役のいちいち大げさなファッション・ショーなど、ダサかわいい演出も忘れない。豪快なアクションはないが、ファミリー向けアクション・コメディーとしてライト感覚で楽しめる。ただ、ダサいおやじだと思っていた隣人が実はキレ者のスパイだったというギャップの面白さはジャッキーではやや迫力不足。その分、過去のジャッキー作品へのオマージュをたっぷり詰め込んだ演出が、長年のジャッキーファンへのプレゼントのようだった。ジャッキーも50歳を越えたが、それでもCGやスタントを使わず、生身で見せてくれる格闘シーンには敬意を覚える。一時期、シリアス路線の作品に傾いたが、ジャッキーにはやっぱり笑顔が良く似合うのだ。
(渡まち子)