ターミネーター4 - 町田敦夫

◆ターミネーターが退化することで『ターミネーター』は進化(80点)

 4作目にして初めてシュワルツェネッガー抜きでの製作。おまけにメガホンをとるのは、おバカ映画の『チャーリーズ・エンジェル』を撮ったマックG。『ターミネーター』シリーズのファンとしては大いなる不安を抱きつつ『T4』の完成を待っていたわけだが、喜べ、同志よ、幸い不安は払拭された。マックGは前三作を相当に研究したらしく、シリーズの精神をきっちりと押さえた、堅実な作品に仕上げている。

 2018年、荒廃した世界で機械軍<スカイネット>と戦う人類抵抗軍の指導者ジョン・コナーは、人間と機械のハイブリッドであるマーカス・ライトと出会う。まだ見ぬカイル・リース(『T1』で80年代にタイムスリップし、ジョンの父親となった男)が敵に捕獲されたことを知ったジョンは、敵か味方か判然としないマーカスの手引きで<スカイネット>の中枢に潜入するが……。

『T2』のエドワード・ファーロング、『T3』のニック・スタールに続く三代目のジョン・コナー役は『ダークナイト』のクリスチャン・ベイル。その妻のケイト役は『T3』のクレア・デインズからブライス・ダラス・ハワードにバトンタッチされ、『T1』でマイケル・ビーンが演じたカイルには『スター・トレック』にも出演しているアントン・イェルチンが扮した。ストーリーのカギを握るマーカスには、売り出し中のオーストラリア人俳優、サム・ワーシントンが抜擢されている。

 シリーズ3作目に登場したターミネーター(T-X)が高性能になりすぎて、「進化の袋小路」に入ってしまった感のあったこのシリーズ。ところがこの4作目では「<審判の日>の10年後/1作目のターミネーター(T-800)が完成する前」という時間軸が設定されたことで、新たな仕切り直しが可能になった。

 今作のターミネーター(T-600)はワンサと登場するわりに性能が低く、早い話がショッカーの戦闘員も同然。その代わり飛行兵器のハンターキラー、バイク型ロボットのモトターミネーター、人間捕獲用ロボットのハーヴェスターといった数々のメカが、人類の大きな脅威となる。

 高性能ロボットによる単独のマンハントというシリーズの基本パターンが崩れたので、『ターミネーター』の4作目というよりは『スカイネット・ウォーズ』の1作目とでも呼んだ方がこの『T4』の実態に近いが、何にせよ格闘、銃撃、爆破といった数々のアクション・シーンは興奮度満点。スタン・ウィンストン・スタジオやILMといった実績ある工房が最新鋭の技術を提供し、リアルにしてスペクタクルな映像を生み出している。

 冒頭に述べた通り前三作への目配りは十分。下半身を吹き飛ばされたT-600が上半身だけでにじり寄ってくる序盤のカットは、「『T1』をちゃんと継承してますぜ」というマックGなりの挨拶だろう。そのほかにも、ジョンが肌身離さず持っている母親の写真がずいぶんと古びていたり、「アイル・ビー・バック」というシュワルツェネッガーの決めゼリフが別の登場人物に引き継がれていたりと、前三作へのオマージュは目白押しだ。

 終盤、「一緒に行って戦うよ」と言うカイルに、ジョンが「もう来てくれたじゃないか」と返すところなんざ、『T1』を知る者には感涙もの。「あの人」が若返って登場したのはさすがに予想外だったが、確かに整合性を考えれば、そうであっても不思議はない。勢い余って『ダークナイト』や『宇宙戦争』からいただいたようなメカも出てきたが、その点は見ない振りをしておこう。

 というわけでシリーズの大ファンである筆者にも、全体としては満足の行く仕上がり。さらなる続編への含みを残したエンディングにも期待が持てる。余韻を引きずって試写からの帰途についたら、京浜東北線の振動音が「ダ・ダン・ダン・ダ・ダーン」というシリーズのテーマ曲に聞こえた。

町田敦夫

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