タンタンの冒険 ★ユニコーン号の秘密★ - 青森 学

テンポ良さとスピード感はスピルバーグならでは。(点数 80点)


(C)2011 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

CGが緻密でキャラクターの表情がしっかり演技しているところが新しい時代の到来を感じさせた。
ハドック船長がタンタンに、祖父からいまわのきわに教えられた遺言を失念してその照れを顔に浮かべるのだが、その曖昧な表情を浮かべる仕草は本物の役者のようだった。

物語の佳境でハドック船長と彼の宿敵とが、ガントリークレーンの鉄骨アームを剣とよろしく波止場で干戈を交えるのだが、原作のアイディアだとは思うのだけれど、心が浮き立つようなアクションシーンはスピルバーグの真骨頂といえそう。
映像作家としてのスピルバーグが自分のアイディアを忠実に再現するためにCGを選んだというのも頷ける。

CGの進歩によって実写とほとんど変わらない映像表現が可能になった今、こういったアニメーション、CG、実写を架橋する映像が進出してきている。
この映画に限らずそういった作品をよく目にするようになった。
より複雑な動物の演技や実写では不可能なカメラワークなど、スピルバーグの創造力に応えるには現時点ではCGくらいしか考えられない。
その点でこの作品はスピルバーグにとって彼がイメージする世界がより忠実に表現出来た世界 といえるだろう。

原作が児童書ということなのか、主人公が物語を紡ぐ推進力は純粋に主人公の好奇心や冒険心であって、大人が共感するような、やむにやまれぬ事情とかそういうウェットな動機が無い。
なので、むしろこの映画は開かれた未来が待っている青少年の冒険心に力を与えてくれるような気がした。

小さな子供に飽きさせないよう、絶え間なく新しいイベントが挿入されていくのだけれど、それがスクリーンから目を離す隙を与えず観るひとによっては疲れてしまうかもしれない。
でも、こういったサービス精神はスピルバーグならではとも思った。
タンタンとハドック船長の活躍はインディジョーンズの冒険 を彷彿とさせるのだが、相当の手間をかけて撮られたシーンをCGで表現することは、たしかにコストは下がったとは思うけれど、そうではなくタンタ ンの作品世界をより忠実に表現するためのCG化なのだから由とするべきだろう。

私見では、この映画は家族向けであって、罪の無いカートゥーンに慣れ親しんだひとが同様の体験を求めて観るのはお勧め出来るが、人生に訪れた閉塞感のために憂愁な季節を過ごしているような大人には真夏の太陽に曝されるようでちょっときついかもしれない。
この映画はやっぱり未来のある子供た ちと相性が良さそうだ(もちろん、少年の心を忘れない大人にも)。

青森 学

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