タイタンの戦い - 福本次郎

タイタンの戦い

© 2010 WARNER BROS ENTERTAINMENT INC AND LEGENDARY PICTURES

◆大きな功績を残した者ほど、引き際を自覚するのは難しい。ここに描かれている神々は、代表権のない会長に祭り上げられた元辣腕経営者が、へそを曲げて会社の足を引っ張るような自爆行為に走っているようなおかしさが漂う。(50点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 断崖にそびえたつ石像が海に打ち捨てられ、巨大なサソリが戦士に襲いかかり、蛇の体に女の頭を持つ魔物が迫ってくる。その、スクリーンから飛び出してくる映像がこの作品の売りのはずなのに、主人公の主観が多いため画面が微妙に揺れて立体感を楽しむ余裕がない。世界を作った神々が人間に及ぼす影響力を失いつつある時代、神と人間の間に生まれた男が大いなる陰謀に立ち向かう物語は、その壮大なスケールがまさに3D向けなのだが、観客席を巻き込む臨場感に乏しかった。それはCGスペクタルに対し不感症になってしまったからだろうか。

 冥界の王・ハーデスは、王女をいけにえに差し出さなければクラーケンという怪物を解き放つとアルゴス王を脅迫する。若き漁師・ペルセウスはクラーケン退治するヒントを得るためにメデューサの首を求めて冥界への旅に出る。

 赤ちゃんのころ海で拾われたペルセウスは、育ての親を尊敬し誇りに思っている。自分が神々のリーダー・ゼウスの血を引いていると知っても、あくまで人間として戦うことを選ぶ。ゼウスは時々ペルセウスの前に姿をあらわし武器や助言を与えるが、ペルセウスはゼウスの援助を潔しとしない。わが子の一人前の男としての自立をうれしく思いながらも、それはすなわち人間がもはや神を必要としていないという現実を肌で感じた瞬間。ゼウスの、喜びとあきらめ、未練と怒りが入り混じった複雑な表情が印象的だ。

 大きな功績を残した者ほど、身の引き際を自覚するのは難しい。ここに描かれている神々は、代表権のない会長に祭り上げられた元辣腕経営者が、重要な会議をスポイルされた揚句へそを曲げて、会社の足を引っ張る自爆行為に走っているようなおかしさが漂う。しかも本人のコネで入社させた若手に直接引導を渡されるという皮肉なおまけつきで。ギリシア神話を題材にした映画を見ていると、人間の本質は数千年では変わらないものだとつくづく実感する。

福本次郎

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