ゾンビーバー - 小梶勝男

ポストモダンゾンビ映画の秀作。B級映画の楽しさがいっぱいに詰まっている(点数 78点)


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異説もあるが、ゾンビ映画は「ホワイトゾンビ(恐怖城)」(1932年)を最初とするのが普通だ。
ハイチのブードゥー教の司祭が、奴隷として使うためによみがえらせた死体をゾンビと呼んだ。
こうしたブードゥー教のゾンビをブードゥーゾンビという。
RKOの名作「私はゾンビと歩いた!」(1943年)や、ハマープロの佳作「吸血ゾンビ」(1965年)もブードゥーゾンビを扱った作品である。

ちなみに「吸血ゾンビ」はタイトルに吸血とあるが、登場するゾンビは血を吸わない。
ハマーはドラキュラ映画の老舗なので、こうしたタイトルがつけられたのだろう。
ゾンビ映画が変わったのは1968年のジョージ・A・ロメロ監督「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」からである。ロメロはリチャード・マシスンの小説「地球最後の男」から影響を受けて作ったと言われている
。「地球最後の男」は吸血鬼の物語だ。
「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」のゾンビは人間を食べる。
そして、ゾンビに噛まれた人間は「感染」してゾンビになる。
吸血鬼の特徴を引き継いでいるのである。
このロメロの「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」から始まったゾンビを、ブードゥーゾンビに対してモダンゾンビと呼ぶ。

 「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」は、吸血鬼小説にインスパイアされながら、なぜ吸血鬼ではなく、ゾンビだったのか。
私見であるが、60年代はアフリカ系アメリカ人の公民権運動があった。形の上では白人と黒人は平等になった。
同時に、ポップアートなど大量生産・大量消費社会をテーマとした芸術が隆盛した時代でもあった。
つまり、平等な大衆社会という幻想が米国で形作られた時代だったのだ。
吸血鬼はドラキュラ伯爵が代表格だが、キリスト教の悪魔が人間を吸血鬼にして奴隷として使う。
最初に噛んだ吸血鬼がボスで、噛まれた人間は奴隷だ。
「伯爵」というくらいで、身分制がある。
ブードゥーのゾンビも奴隷である。
一方、ゾンビは、噛まれた人間も同じようにゾンビとなり、最初に噛んだゾンビとの間に主従関係はない。
みんな平等なのである。
ロメロのゾンビは、貴族社会に属していた吸血鬼の大衆社会版だとも言えるのではないだろうか。
ロメロのゾンビ映画第2作目「ゾンビ」が大衆社会の象徴であるショッピングモールを舞台としていたことは、偶然ではない。
ゾンビとなってしまえば、老いも若きも、金持ちも貧乏人も、貴族も平民も、黒人も白人も黄色人種も、すべてがただ人肉を求めてさまようしかない。
これは究極の平等だ。
 
しかし、大衆消費社会も変わりつつある。格差社会となって平等幻想も崩れた。
もはやモダンゾンビはシリアスなものではなく、パロディー化する。
ロメロの作品自体が、自らの作品をパロディーとしてゾンビの進化を描いていくようになる。
パロディーとなったモダンゾンビを、私はポストモダンゾンビと呼んでいる。前置きが大変長くなったが、「ゾンビーバー」は、そんなポストモダンゾンビの作品だ。
 
汚染廃棄物の影響で、ビーバーがゾンビ化し、湖畔でセックスを楽しむ若い男女を襲う。
湖畔、若い男女、セックスという要素は、「13日の金曜日」シリーズから引き継がれた米国ホラーの伝統的な舞台設定だ。
下品なトークもお約束で、若者たちは血まみれのスプラッター地獄に陥ることになる。
エロとスプラッターはとても相性がいい。
 
しかし特筆すべきは、凶暴極まりないゾンビーバーたちが、人形を動かして表現されているということだ。
CG全盛のこの時代に、である。
ところがこれが、意外に功を奏している。
ゾンビーバーたちが人形なので、凶暴極まりないのに、どこか動きがかわいいのである。
「キモかわいい」という言葉があるが、こちらは怖いのにかわいい、つまり「コワかわいい」だ。
ゾンビーバーだけではない。
「バッド・マイロ!」のマイロや、「青鬼ver.2.0」のフワッティーなども「コワかわいい」部類に入るだろう。
凶暴な美女と同じで、何ともいえない魅力がある。
「キモかわいい」の次は「コワかわいい」がトレンドになるかも知れない。
 
ゾンビーバーたちが、ゾンビになってもビーバーの特徴を生かして襲ってくるのも面白い。
木をかじって人間の方に倒したり、逃げ道をふさぐため堤防を作ったりする。
ゾンビーバーに噛まれた人間は歯が飛び出てビーバーのようになる。
ビーバー人間である。
この場面は何だか異様で怖い。
そのリアルさに「怪奇!吸血人間スネーク」を思い出してしまった。
バーナード・L・コワルスキーによる演出がグダグダのB級作品だったが、ジョン・チェンバースらによる特殊メイクだけはすごかった。
「ゾンビーバー」も、ビーバー人間の造形が見事なのだ。
そして、ビーバーだけでなく、熊や蜂もゾンビ化する。
ゾンビーバーはゾンビ+ビーバーだが、蜂の場合はゾンビ+ビーで、ゾンビーだ。
 
最後に流れる「ゾンビ~バ~」と歌う歌が、頭から離れない。
くだらないB級映画と言えばまさしくそうだが、恐怖、笑い、エロ、パロディー、スプラッターと、B級映画の楽しさがいっぱいに詰め込まれていて、実に楽しい。作り手たちのホラーに対する愛情が細部まで感じられた。
これはやはり、ポストモダンゾンビ映画の秀作ではないかと思う。

小梶勝男

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