ゾンビランド - 福本次郎

◆ゾンビに支配される世界に順応しようという開き直りが映画を明るい印象にする。もちろん、残酷描写はゾンビ映画の王道を行くのだが、主人公のある種間抜けなキャラクターが、かつてないコミカルでユニークな雰囲気を醸し出す。(50点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 ゾンビに脅えて暮らすより、積極的にゾンビ殺しを楽しもう。国中いたるところでゾンビが群れをなし人間の肉を求めてさまようようになった世界、安全な場所が少ないのならばその境遇に順応しようという開き直りが映画を明るい印象にする。もちろん、血しぶきが舞い脳漿が吹き出し内臓が引きちぎられる残酷な描写はゾンビ映画の王道を行くのだが、主人公のある種間抜けなキャラクターと相まって、かつてないコミカルでユニークな雰囲気を醸し出す。

 ひきこもり大学生のコロンバスはゾンビランドで「32のルール」を自らに課し生き残っていたが、故郷に帰るためにタラハシーというゾンビハンターの車に乗せてもらう。道中、ウィチタとリトルロックという姉妹に騙されて車と武器を奪われてしまう。

 人嫌いで自己完結していたコロンバスが外界に触れるうちに、他人との関わるのもよいものと思い始めるが、相手は癖のあるいかついオッサンと詐欺師姉妹といった普通じゃない人々。むやみにやさしさや友情を示したりしない距離感がコロンバスにとって受け入れやすかったのだろう。タラハシーには頼れる兄貴、ウィチタには恋愛感情、リトルロックにはカワイイ妹という親近感を覚えていく過程で、彼の精神的成長と相まって絆を育んでいく。1人でできないことも4人ならできる、この絶望的な時代に生きるのも悪くないと思わせる展開が心地よい。

 4人は本物のビル・マーレーの豪邸に忍び込んでゴージャスな気分を満喫した後、遊園地に追い詰められた姉妹を救うためにコロンバスとタラハシーが駆けつける。ゾンビキラーとしてのタラハシーはそこでも能力をいかんなく発揮する。ゾンビが元々人間だったなどという感傷とは無縁、ただ危険な存在として破壊の対象としかとらえていないクールさが格好の憂さ晴らしになっていた。そして何よりウィチタがコロンバスに本名を告げるシーンで、コロンバスにとって初めて人に愛される経験を描き、未来への希望を残す。血なまぐさいのに後味が良い作品だった。

福本次郎

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