ゾンビランド - 町田敦夫

◆アクションあり、ロマンスあり、笑いありの健全ホラー(70点)

 映画ライターがどんな映画でも観るかというと、決してそんなことはないわけで、たとえば私はホラーは観ない。理由は簡単、夜ひとりでトイレに行けなくなっちゃうから。今回はそんな恐がりでも安心して観にいけるゾンビ映画をご紹介しよう。何たってこれ、登場人物が不気味なゾンビに食い殺される不健全な映画ではなく、登場人物がゾンビをジャンジャンぶっ殺していく健全な(?)作品。おまけにアクションあり、ロマンスあり、胸を打たれるシーンありの痛快コメディなのですよ。

 舞台はすでに人類の大半が人食いゾンビとなった世界。さえない大学生のコロンバス(ジェシー・アイゼンバーグ)は、「トイレに用心」「後部座席を確認しろ」といった「生き残るための32のルール」を作って、どうにか命をつないできた。親元に戻ろうとしたコロンバスは、旅の途中でタフガイのタラハシー(ウディ・ハレルソン)や、詐欺師の姉妹と出会い、ゾンビがいないという噂の遊園地をともに目指すのだが……。

 オープニングの段階から、つかみは上々。「二度撃ちしてとどめを刺せ」「シートベルトをしろ」といった「生き残るためのルール」が、ユーモアとサスペンスを交えた実例で紹介される。本作のゾンビも、動きの鈍いリビングデッドではなく、最近はやりのウイルス感染型ゾンビ。当然、全力疾走もオーケーなので、ルールその1は「有酸素運動で鍛えろ」ということになる。感染の拡大期に「まず太めが食われた」というコロンバスのモノローグには、多くのアメリカ人が爆笑し、続いて頭をかいただろう。

 ルーベン・フライシャー監督が「これはゾンビが出てくる『ミッドナイト・ラン』だ」と語るとおり、コロンバスとタラハシーの迷コンビぶりが実にケッサク。引きこもりのコロンバスとゾンビ退治に燃えるタラハシーではどう見ても水と油だが、年齢も性格も違う男ふたりが、次第に義兄弟的な友情を結んでいく描写がいい。

 詐欺師の姉のウィチタを演じたエマ・ストーンは、いかにも男を手玉に取りそうなエロい顔だち。妹のリトルロックには名子役のアビゲイル・ブレスリンが出演を快諾し、「彼女が(こんなゾンビ映画に)出るわけがないから、彼女に似た人を探していた」というフライシャー監督を喜ばせた。ちなみに登場人物の役名がみんなアメリカの地方都市の名前なのは、初めは互いに不信感を抱いていた彼らが本名を名乗るのを避けたためだ。

 それにしても、この題材を単なる悪趣味なスプラッター映画や、寒いギャグ映画に終わらせないフライシャーの力量には恐れいる。タフなタラハシーが心の奥に抱えた傷や、小悪魔ウィチタの意外に妹思いな一面を見ているうちに、こちらもすっかり彼らの旅の道連れだ。人と関わらずに(しかもある意味、それが賢いことだと思って)生きてきたコロンバスが、ルールのひとつを破ってウィチタのために命を張る大詰めには、図らずも胸が熱くなった。

 遊園地でゾンビの群れに囲まれた4人が、メリーゴーランド、ジェットコースターなどの遊具を使ってゾンビを倒していくアクションは最高の見せ場。3Dで続編が作られる企画もあるようなので、この第1作からしっかりチェックしておきたい。

町田敦夫

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