◆「ユーロ・トラッシュの帝王」ジェス・フランコのゾンビ映画。ユーロ・トラッシュとは何かを知るには格好の作品(20点)
この映画は劇場未公開映画です。評価の基準は未公開映画に対してのものとなります。
最近、ヨーロッパのZ級映画を「ユーロ・トラッシュ」と呼んで再評価する傾向がある。言葉はお洒落な感じだが、要するにヨーロッパのクズ映画というわけだ。その代表格として有名なジェス・フランコ監督が1981年、当時のゾンビブームに乗って発表したのが本作。A・M・フランク監督との表記もあるが、フランコの変名の一つだ。「オアシスゾンビ」としても知られている。当然ながら日本で劇場公開はされていない。
ゾンビ映画研究家の伊東美和氏が「ゾンビ映画大事典」で「我々に映画鑑賞の厳しさを教えるかのようだ」と書き、ホラー映画研究家の木野雅之氏が「異形の監督ジェス・フランコ」で、「ジェスのダメダメ作品として認知されている」と書いているので覚悟はしていたが、想像以上のキツさだった。
砂漠のオアシスに隠されているという、ドイツ軍の秘宝を捜す一行が、オアシスを守るドイツ兵のゾンビに襲われるというストーリー。
ラバーマスクに長い虫を載せた「サンゲリア」のようなグロテスクなゾンビは確かに出てくるし、お色気場面もあるが、全体的に非常に投げやりな作り。ストーリーもキャメラも編集もいいかげんで、フランコ監督のやる気のなさがモロに伝わってくる。戦闘場面は「バトル・コマンド熱砂の大作戦」(1971)からの流用。DVD(WHDジャパン/フォワード版)の画質も悪く、最後の方は何が何だか殆ど見えない。まあ見えてもどうせたいしたことはないのだろうけど。
さすがに木野氏は「ジェス特有の倦怠感を催す生ぬるい温室テイスト」があると妙な評価をしているが、それを普通の言葉に翻訳すると「退屈」と言うのだろう。
木野氏によればこの作品はフランスのユーロシネ版とスペインのマルテ版の2ヴァージョンがあるらしい。WHDジャパン版のDVDがどちらなのか分からないが、まあ大差はないと思われる。普通の人には勧められないものの、「最低」に触れておくのは悪いことではない。「ユーロ・トラッシュ」とは何か、ジェス・フランコとは何者か、を知るには格好の作品だ。
(小梶勝男)