ソーシャルネットワーク - 樺沢 紫苑

まぎれもない、エキサイティングな傑作映画(95点)

映画を見終わってまず、思う。

「天才だ!」

誰が・・・というと、Facebookの創立者マーク・ザッカーバーグではない。

この作品の監督のデヴィッド・フィンチャーが、である。

映画の最初から最後まで、人物のセリフで埋め尽くされている。

言葉と言葉の応酬。

通常、こうしたセリフの多い映画は、退屈で眠たくなることが多い。

しかしフィンチャーは、最初から最後まで、緊張の糸を切ることなく、
見事に観客を引きこんでいく。

見事な演出力である。

人物たちは、じつによくしゃべる。

しかし、交わされる言葉の多さと反比例していくように、
人物たちのコミュニケーションは深まらない。

 

むしろ、誤解や反目は深まり、
最終的には関係の決裂という最悪の結果を迎える。

 

コミュニケーション下手が作った、世界最高のコミュニケーションツール。

非常に皮肉な話しだが、そこがドラマとしておもしろい。

 

ザッカーバーグ本人は、「決して、コミュニケーション下手ではなかった」と
反論しているが、周囲の証言をもとに作られたこの作品、
周囲から「コミュニケーションが上手ではない」と思われていたことは
確からしいと思う。

 

ザッカーバーグは天才というよりは、努力家。行動力の人だと思う。

素晴らしいアイデアを著想する人はたくさんいるが、
それを現実に形にできる人は、ほんのわずかである。

 

彼がやるべき時に、圧倒的な「集中力」で、
猛烈に作業こなしていく姿は感動的だ。

 

その姿は、ドラマ「ゲゲゲの女房」で、
水木が机に向かい圧倒的な集中力で
必死にペンを走らせている姿と重なった。

 

一心不乱。やるべき時はやる。緊張と弛緩。

表現は、いろいろあろうが、一つの重要な成功法則ではないかと感じる。

『ソーシャルネットワーク』には、いろいろな要素が盛り込まれている。

自由の国アメリカは、学歴社会であり格差社会であり、一般庶民が
そこから這い上がってアメリカンドリームを達成するのは、
そうそう容易なことではない、という厳しい現実描写。

「アメリカンドリームをなしとげる主人公」ばかりを扱ってきた
ハリウッド映画の中において、異色である。

 

それぞれの登場人物は、それぞれ表と裏、良い面と悪い面、
長所、短所を持っている。

 

私は、それが全肯定されているような気がして、見た後に実に清々しい
気持ちになった。

「欠点を含めて、一人の人間」ということだ。

マークとエドゥアルド。

もう少しだけ、きちんとコミュニケーションをとっていれば、
ここまで対立することはなかったと思う。

また、悪役的に描かれるウィンクルボス兄弟も、
「家」や「父親」の名誉にしばられ自由がきかないピエロのようで
実に哀れに見えてくる。

結局、見る人によっていろいろな見方ができる映画。

あるいは、見るたびにいろいろなことが見えてくる映画である。

ただ、Facebookについて最低限の予備知識がないと話しに入り込めないし、
「ファイナルクラブ」の仕組み、アメリカの学歴社会の現状など
予備知識がないと理解しづらい部分もある。

映画の中では、過不足なく説明はしているけども。

物語がおもろしいのは当然として、カメラ、編集、音楽など
映画的な要素が全て最高の出来として完成されている。

まぎれもない、エキサイティングな傑作映画だ。

樺沢の評価 95点

樺沢 紫苑

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