◆「やってみんとわからん!」と、心に浮かんだことにチャレンジする高校生。ソフトボールチームを作るプロジェクトを立ち上げ、周囲を説得し、仲間を募り、志を共にして戦いに臨む。映画はそんな友情と熱血の物語をコミカルに描く。(40点)
「やってみんとわからん!」と、心に浮かんだことはなんでもチャレンジしようとする高校生。この主人公の根拠なき自信とへこたれない精神力、物おじしない突破力はまさに青春モノの王道だ。小さな田舎町で、簡単にヒーローになりたいと願う彼が、短絡的思考の果てにたどりついたのは競技人口ゼロのスポーツで全国大会を目指すというもの。プロジェクトを立ち上げ、周囲を説得し、仲間を募り、志を共にして戦いに臨む。映画はそんな友情と熱血の物語をコミカルに描く。
家庭科系の高校に通うオニツカは親友のノグチにソフトボール部の創部に誘われる。県内で他にソフトボールチームはなく、エントリーするだけで全国大会出場できるという口説き文句で次々と男子生徒を入部させるが、ほとんどが野球経験すらない素人集団。しかし、監督の指導のもとで特訓を積む。
物事を深く考えずにとりあえず行動に移してしまうノグチの腰の軽さがいい。楽天家で他人をその気にさせるのがうまく、そこにいるだけで場が明るくなるリーダーシップの典型だ。一方で、あきらめが早く時にチームメイトに励まされたりもする。その落差がほのかなおかしさを誘い、熱さの中にユルさを漂わせる演出が肩の力を抜いてくれる。
ただ、もともと男子生徒が少なく9人集めるのが大変とはいえ、部員がここまで運動神経の欠如しているのはちょっとありえない。見かけとのギャップを強調するキャラクター設定はわかるが、ショートのデブやレフトの留学生、ライトの秀才など、笑いよりもむしろ寒くなるレベルの下手くそさ。彼らが猛練習を経て少しでも上達すれば達成感は得られるのだが、まったくボールに対し親しみを覚えることなく最初で最後の試合に臨むのだ。こんな状態でいきなり隣県の代表と対戦するなど、相手チームだけでなく、審判や関係者全員に失礼だろう。高校生たちの思いとは対照的に、ソフトボールという競技への敬意の足りなさが目立つ作品だった。
(福本次郎)