些細なミスも命取りになる緊迫感がスクリーンからあふれ出す。(点数 50点)
(C)2010 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.
愛する妻は絶対に無実、その思いだけが男を支え、狂気にも似た信念
が彼を暴力にまみれた世界にいざなっていく。それは彼にとっての正
義。法と権力の前では無力でも、アイデアと実行力、情報とカネ、そ
して引き返さない覚悟を決めて自分の土俵に持ち込めば国家を相手に
しても恐れる必要はない。映画は、身に覚えのない罪で濡れ衣を着せ
られた妻を救いだそうとする主人公の執念を描く。
【ネタバレ注意】
ララが殺人容疑で実刑判決を受けるが、ララの夫・ジョンは上訴を断
念し、彼女を脱獄させる計画を練りはじめる。元脱獄囚からアドバイ
スを受け、ジョンは様々な障害を克服していく。
ジョンは証拠や証人を集めてララの潔白を明らかにするのではなく、
あくまでララの奪還に固執する。それはもはや国に対する信頼を100%
失っていたからだろう。市民の人生など一顧だにしない警察・検察・
裁判官といった巨大な官僚機構への挑戦状。“完全”を求められるは
ずの司法制度に風穴をあけてその不完全さを証明する闘いなのだ。
そして、元脱獄囚の「脱獄自体より逃げ続ける方が困難」の言葉通り、
ララの身柄を奪ってからの逃走経路をいかに確保するか。わずか10数
分で橋は封鎖され、30数分であらゆる道路に検問が張り付く。鉄道の
駅も見張られている状況で、衣服を変え息子を連れ戻した上、家族そ
ろっての逃亡。このあたり、些細なミスも命取りになる緊迫感がスク
リーンからあふれ出す。
(福本次郎)