◆ホラー好きにはたまらないネタがじっくりと凝縮(85点)
今では『スパイダーマン』シリーズでお馴染みとなっているサム・ライミ監督が、原点回帰という形で作り上げたホラー作品。
銀行のローンデスクで働くクリスティン(アリソン・ローマン)はアシスタント・マネージャーのポストに就くため、上司ジャックス(デヴィッド・ペイユー)に仕事ができることをアピールする必要に迫られていた。そんな時、ジプシー風の不気味な老婆ガーナッシュ夫人(ローナ・レイヴァー)が来店し、三度目の不動産ローンの延長願いを申し出るが、クリスティンはジャックと相談の上、これを拒否する。その瞬間、ガーナッシュは突然マジギレしてクリスティンに突っ掛かるが、警備員に取り押さえられて退店する。その夜、仕事を終えて駐車場に向かったクリスティンは再びガーナッシュに出くわし、襲撃される。別れ際に夫人から死の呪いをかけられたことからクリスティンの身辺では奇妙な出来事が続々と発生し、恐怖のえじきになってしまう。
本作の面白さは、何と言ってもクリスティンの身に起きる数々の恐怖とガーナッシュ夫人の気味悪さ全開のキャラだ。
とにかくショッキングな描写は観る者の印象に残るような強烈なインパクトで描かれている。印象的なモノを挙げると、クリスティンがガーナッシュにまるで唇を奪われるかのような勢いで喰らいつかれたり、クリスティンの突然の鼻から大量出血。これらの描写は、一度観ると忘れられないほどであり、魅せ方も巧い。他にもグロテスクが追求されたホラー好きにはたまらないネタがじっくりと凝縮されている。また、これらの描写にユーモアが感じられるのもライミ監督ならではの味付けであり、本領を発揮していることがわかる。
また、ハンカチやハエを使った不気味なムード作りの秀逸さ、クリスティンの彼氏で大学教授クレイ(ジャスティン・ロング)やクリスティンをサポートする霊能力者ラム(ディリープ・ラオ)らの存在感の大きさが面白さを引き立てている。中でもクリスティンとクレイの恋人同士の強い信頼と絆はとても味わい深く、劇中でのショッキングや恐怖を和らげ、ちょっとした安心感を与えてくれる。
サム・ライミ監督の久々のホラー作品は、とにかく面白さを存分に楽しませてくれる!!
(佐々木貴之)