スペル - 小梶勝男

◆「スパイダーマン」シリーズのサム・ライミのホラー・コメディー。「エクソシスト」と「キューティ・ブロンド」が共存しているような面白さ(81点)

 「ラブコメ」というジャンルがあるが、ホラーにはホラー・コメディー、つまり「ホラコメ」とでも呼びたいものがある。残酷だが笑えるスプラッター映画とはちょっと違い、もう少しコメディー寄りの映画だ。本作の監督サム・ライミでいえば、「死霊のはらわた」(1983)はスプラッターだが、「XYZマーダーズ」(1985)はホラコメだろう。スプラッターは常に笑えるわけではない。もし笑えるとしたら、描写の過激さがリアリズムを突き抜けて笑いとなる。つまり、恐怖と笑いは表裏一体なのだが、ホラコメではホラー(的な要素)とコメディー(的な要素)が一体化しないまま共存している。無論、厳密な分類は不可能だし、分類しても意味はないが、大体そんな印象を持っている。

 「スペル」はとてもよく出来たホラコメだと思う。「エクソシスト」と「キューティ・ブロンド」が共存しているような面白さがあるのだ。

 銀行員のクリスティン(アリソン・ローマン)は、不気味な老婆(ローナ・レイヴァー)の不動産ローン延長を断って恨みを買う。駐車場でクリスティンを襲った老婆は、コートの袖口のボタンを奪い取り、呪いをかける。その日から、クリスティンの身の回りに不可解な出来事が次々と起こる。

 主人公クリスティンの設定がいい。老婆の呪いで次々とひどい目に遭うのだが、どこまでも前向なのだ。そのため、ホラーなのに意外に陰惨なムードにならない。田舎から出てきて銀行員になった彼女は、田舎コンプレックスを持っていて、金持ちのボーイフレンドに気に入られようと必死だったり、銀行で同僚より出世しようと頑張ったりする。演じるアリソン・ローマンの明るいキャラクターもあって、まるでラブコメ映画の主人公のようなのだ。

 銀行での出世競争や、恋人の両親に食事に招かれる場面など、そのままラブコメとしても通用する。特に、自分の母親がアルコール依存症であることを告白して、恋人の母親に気に入られるエピソードがいい。その後すぐにホラーの展開になってしまうのも面白かった。

 クリスティンは呪いに対しても、恐怖に怯えるだけではない。時にはモラルに反してまで積極的に回避しようとする。その行動力は小気味良い。共感も出来るし、自然に応援したくなる。

 恐怖シーンも怖いことは怖いが、怖い以上に汚くて笑ってしまった。老婆はやたら体液を吐き、クリスティンに浴びせ続ける。ホントに汚いので、食事前には見ない方がいいかも知れない。

 もちろん老婆役のローナ・レイヴァーの怪演や、ショックシーンのVFXも楽しめた。ホラーとしてもちゃんと成立している。試写室では、私の隣の席に座った女性が、恐怖場面の度に体をビクッとさせるので、そっちの方に驚いた。冒頭から30分くらいだっただろうか。途中で出てしまったので、よほど怖かったのかも知れない。ホラコメだからといって、怖くないわけではないのだ。

小梶勝男

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