スペイン一家監禁事件 - 福本次郎

決して他人事とは思えない切迫感があった。 (点数 50点)


(C) 2010 VACA FILMS STUDIO S.L-BLUR PRODUCCIONES S.L-LA FABRIQUE 2

左右2分割されたスクリーン上でそれぞれ、父は強盗に脅されながら運
転し、娘はレイプ魔に追われている。違う場所で同時進行で起きてい
る出来事、やがて父が娘の待つ家に帰ってきたとき、別々に彼らをと
らえているフレームは徐々に近づき、父娘が抱き合った瞬間ひとつの
画面に統合される。暴力と血にまみれ、希望も救いも次々と消されて
いく展開の中、唯一見入ってしまうシーンだ。映画は強盗に狙われた
平和な家庭が直面する悪夢のような体験をリアルに再現し、通信手段
を失った人間が味わう無力感と絶望を見事に表現している。

郊外の豪邸に引っ越してきたハイメ一家のもとに、夜、3人の男たちが
押し入る。リーダー格の男はハイメを連れ出してCDからカネを引き出
させる一方、リビングに残された妻と娘は粗暴な男にいたぶられる。

シャワーから湯が出ない、ケータイが圏外、家族で食事の予定なのに
娘がボーイフレンドと出掛けるetc.…。日常の些事に怒ったり愚痴っ
たりする妻娘の機嫌を必死で取るハイメ。そんなありふれた時間が一
瞬にして死の恐怖という非日常に変わってしまう運命の暗転。さらに
外部から孤立した状態で、犯人たちは親娘の命をもてあそぶ。

強盗たちは手際が悪く泥棒としての美学も哲学もないゴロツキ集団。
物語はEUの拡大で紛争地域から銃の扱いに長けた民兵崩れが大量に欧
州に流入してきた現実が背景になっている。そこには決して他人事と
は思えない切迫感があった。

福本次郎

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