スノーホワイト - 青森 学

優しさに溢れていても心に確固とした芯を持つ主人公は、現代のニーズにマッチした白雪姫像と謂えるだろう。(点数 78点)

剣を手にして戦うスノーホワイトは過去の因習を断ち切って新しい未来を切り拓く。
要所要所でグリム童話のエピソードを浚いながらストーリーは少女から戦う女への変化へとダイナミックに、そして現代的にアレンジされている。

継母のラヴェンナを演じるシャーリーズ・セロンの怪演が主役を食っていた。
スノーホワイト(クリステン・スチュワート)を執拗に追いつめる継母の人物背景をある程度描いているので観る人によっては継母に共感することも有るだろうし、そこがこの作品を単なるおとぎ話にしない物語の重厚さが有る。この映画が良作であるかの成否は殆どシャーリーズ・セロンの演技に掛かっているといっても過言ではない。

セロンが演じるラヴェンナの気性の激しさや歓迎されない過去を追想する際に浮かべる憂愁に満ちた表情など、難しい役を堂々と演じ切っていた。やはりアカデミー賞を獲った俳優はその名に恥じない仕事をするものだ。

元々は200年前に出版されたグリム童話が原典で、おとぎ話とは言いつつも残酷で子ども向きではないストーリーを改変しながらディズニーアニメの『白雪姫』のような愛情溢れるストーリーに成るなど、『白雪姫』は時代の変遷と共にその表情を変えてきた。

そしてこの『白雪姫』は21世紀に望まれた新たなヒロイン像なのである。それは清楚で慎ましやかでありながらもいざとなれば剣を取り、民を導く自由の女神になり得るのだ。それはドラクロワの絵画にもなぞらえられるほど扇動的なものだ。

映画ではスノーホワイトが剣を取り戦う決意に至るまでが丹念に、そして長く描かれておりストーリーの大半は、心根は優しいが生命力に欠ける彼女のサバイバルを中心に展開していく。『白雪姫』のオリジナルは中編小説にも満たない短編なのだが、それをいかに2時間を超える大作に編み直すのかがキーポイントだった。

今作は随所にオリジナルのエピソードを散りばめながら新しい物語へと再編されている。ストーリーにはそれほど意外性は無いが、魔法をかけられた黒い森のおどろおどろしさや妖精が棲むエリアの風景は想像力に満ちていて目を見張るシーンが満載だ。

ビジュアルシーンは息を呑むほどに美しいのだが、『白雪姫』のストーリーをなまじっか知っているばかりにこの場面はオリジナルの引用だと分析しながら観てしまうのは少しばかり勿体無い。
新しくアレンジされた『白雪姫』として先入観無しに観られたら、この映画を一層楽しめると思う。

青森 学

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