スノープリンス 禁じられた恋のメロディ - 福本次郎

◆青白い月の光が窓から差し込む夜の音楽室で、ピアノに向かう少女の指がドビュッシーの名曲を奏でる。艶めかしいほどに情感的なシーンは、日々の食事にも事欠く貧しさの中でも正直に生きようとする少年に宿る希望のようだ。(40点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 青白い月の光が窓から差し込む夜の音楽室で、ピアノに向かう少女の指がドビュッシーの名曲を奏でる。艶めかしいほどに情感的なシーンは、日々の食事にも事欠くほどの貧しさの中でも正直に生きようとする少年の心に宿る希望のよう。彼は彼女の姿を「夜空色」の絵具でスケッチし、その思いを永遠のものにしようとする。映画は、素封家の娘と木炭焼きの孫の、身分違いの幼い恋を描く。力ずくで奪うには弱すぎ、諦めるには若すぎるふたりの関係は、お互いの胸の中でしか成就できない。雪のように淡く消えた切ない愛は記憶の中でのみ美しさを保つのだ。

 裕福な家庭に育った早代は、貧乏で学校に行けない草太が描く絵が大好きで、いつも彼のそばで遊んでいる。ある日、学校の男子と草太、早代の5人で、森の奥にあるといわれている池に行こうとするが、汽車にはねられそうになったせいで草太は早代の父の怒りを買う。

 軍国主義に走る時代の日本が舞台なのだが、雪深い田舎ではまだそれほど不自由を感じさせるほどではなく、人々はつつましくものどかに生活している。そんな中、草太の祖父は男手ひとつで育てながらも「人を憎んだり恨んだりしてはいかん」と事あるごとに草太に言い聞かせ、彼も素直に従っている。しかし、「嘘はいかん」とも言われている草太が早代に誘われたとはいえ入場料を払わずにサーカス小屋に忍びこむのどういうわけか。ピエロとの出会いを演出するにしてもご都合主義的ではないか。子供向けの作品だからといっても、この矛盾は鼻白む。

 また、チビという愛犬が登場するが、草太に財布を盗まれた時や、汽車や用務員の接近を知らせる以外にほとんど活躍の場がない。もっと草太とのかけがえのない絆や思い出となるエピソードがなければ、わざわざ登場させる意味がない。前半部分こそ「フランダースの犬」的な要素を散見させるが、中盤以降は草太と早代中心の展開。いてもいなくても同じような扱いでは、凍死した草太以上にこの犬がかわいそうだった。。。

福本次郎

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