◆「ミックは計画的で、俺は朝起きて考える」とのキースの言葉が印象的(50点)
生ける伝説のロックバンド、ザ・ローリング・ストーンズのアルバム「メイン・ストリートのならず者」の製作現場に密着した音楽ドキュメンタリー。南仏で行われたストーンズの曲作りと私生活、ライブなどを、貴重な写真と映像、インタビューで描いている。
1971年、フランスでアルバムを作る背景が、英国の高額な税金から逃れるためという生臭くかつ切実な問題だったことを初めて知ったが、彼らの南仏での生活は自由で優雅、自堕落で背徳的だ。キース・リチャーズが借りていたコート・ダジュールの別荘には、さまざまな人物が訪れる。フィルムには、ミック・ジャガーの結婚式や、メンバーの家族の姿が映し出され、子供たちも含む人々の目の前に、おそらくドラッグ、おそらく酒、おそらくセックスが、あけっぴろげにある環境に驚く。メインは地下にある自前の録音スタジオでの曲作りだ。そのスタジオ施設は決して充実しているとは言い難いものだが、何よりそこには自由な空気がある。イギリスからフランス、さらにアメリカまで渡って、アルバムを仕上げる彼らの音楽への情熱は並々ならぬものだ。「ミックは計画的で、俺は朝起きて考える」とのキースの言葉が印象的。この伝説的なバンドは異なる個性がぶつかりあいながらも互いを尊重することで、息長くトップの座を保っているのだ。出来上がった「メイン・ストリートのならず者」は、ストーンズのアルバムの中でも最高傑作のひとつと言われている。映画としては、DVDの特典映像のようなイメージだが、それが1本の作品として成立するところが、ストーンズがビッグ・ネームである証拠だ。ストーンズのレコーディング風景を記録したドキュメンタリーにはゴダールの「ワン・プラス・ワン」があるが、見比べてみるのも面白いだろう。いずれにしてもファンには垂涎もののお宝記録映画だ。
(渡まち子)