ステップファーザー 殺人鬼の棲む家 - 小梶勝男

◆「プロムナイト」をリメークしたネルソン・マコーミックが、今度は「Wステップファーザー」をリメークした。米国ではそれなりにヒットしたが、地味で日本では劇場未公開に。スリラーとしてはまずまずの出来(76点)

この映画は劇場未公開映画です。評価の基準は未公開映画に対してのものとなります。

 ホラーファンの間では知られている1987年公開のジョセフ・ルーベン監督作「Wステップファーザー」のリメークだ。2009年の米映画で、米国でそれなりにヒットしたにもかかわらず、日本では劇場未公開で、DVDのリリースのみとなってしまったサイコ・サスペンス。

 マイケル(ベン・バジェリー)が士官学校から戻ると、母親のスーザン(セラ・ウォード)には、結婚を前提に付き合っているデヴィッド(ディラン・ウォルシュ)という新しい恋人が出来ていた。表面上は親切で立派な人間に見えるデヴィッドだったが、次第におかしなところが見え始めてくる。

 冒頭ですぐ、デヴィッドが殺人鬼であることは明かされる。一人で子供たちを育てる女性の家庭に「ステップファーザー=義父」として入り込み、「理想の家族」を作り上げようとするが、それが少しでも失敗したと思うと、皆殺しにしてリセットする狂人なのである。

 米国でヒットした理由も、日本で劇場未公開となった理由も、見ればすぐに分かる。米国では離婚が多いだけに再婚も多く、突然、見知らぬ他人が家族となるという事態が、珍しくないのだろう。そして、最初は親切だと思っていた義母や義父の別の面がだんだんと見え始めるといった経験も、よくあるのかも知れない。本作は、そんな生々しい体験に基づいた恐怖を描いているから、リアルに感じられるのだろう。

 一方で、極めてリアルな分、地味になってしまった印象も否めない。次々と殺人が描かれる映画であれば、70~80年代のスラッシャー・ホラーに親しんだファンなら、派手なスプラッター場面や、趣向を凝らした殺人場面を期待する。しかし、本作の殺人鬼は手で鼻と口をふさいだり、頭からビニール袋を被せたり、首を押さえてプールに顔を突っ込んだりと、腕力というより握力を使った窒息系の殺人技がほとんどなのだ。最後にやっと刃物を出すが、逃げる被害者と追う殺人鬼の描写は意外にあっさりとしている。

 殺人鬼とのチェイスが、地下室から屋根裏へと、縦の動きを使っているのはいいのだが、スタンリー・キューブリックの「シャイニング」(1980)やジョン・カーペンターの「ハロウィン」(1981)などと比べると、いかにも物足りない。

 それよりも本作の見所は、義父になりすまそうとする殺人鬼と、家族との人間関係の緊張感にあるのだろう。その点は非常によく出来ていて、再婚によって新しい家族を築くことがいかに難しいかが、きちんと描かれてる。ある意味、「好き嫌い」で判断する部分が大きい日本人と違って、米国人は一般的に家族の問題も理屈で処理しようとするため、理屈を超えた「嫌な感じ」が怖いのではないだろうか。殺人鬼を演じるウォルシュは時折見せるロボットのような表情が実にうまい。いい人に違いないのだが、どこか腑に落ちない、という感じをよく表現していたと思う。また、マイケルの恋人役を、ホラー映画でよく見かけるアンバー・ハードが演じているが、終始、水着である。スタイルもよく、かわいいので、彼女を見ているだけで飽きないだろう。

 再婚で現れた「義父」による「虐待」は、最近では日本でも珍しくなくなってきた。新しく家族を作り直すという問題は、もはや米国特有のものではない。本作は現代の日本人にもある種の生々しさを感じさせるのではないか。

 それにしても、本作に登場する家族はそれほど大金持ちという設定ではないように思うのだが、地下室も屋根裏部屋もある大きな邸宅に、広い庭、プールまである。日本人の暮らしはやはり極めて貧しいのではないかと、改めて思ってしまった。

小梶勝男

【おすすめサイト】