話題の劇場版アニメ・スター・ウォーズ登場!(40点)
2003年から2005年までテレビ放映されていたアニメーションの「スター・ウォーズ」。それはスター・ウォーズファンを納得させる内容の作品で人気を博し、アニメ版を観たジョージ・ルーカスがその映画化を提案。そして2008年夏、テレビ版と同じタイトルの映画『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ(原題:STAR WARS: THE CLONE WARS)』が誕生した。このアニメ版にはアンソニー・ダニエルズ、クリストファー・リー、サミュエル・L・ジャクソン等、実写版からの俳優達も数人参加している。
クローン・ウォーズによって混乱に陥っている銀河系。共和国を有利に立たせるため、アナキン・スカイウォーカーは彼のパドワンであるアソーカ・タノと共に誘拐されたジャバ・ザ・ハットの息子ロッタを無事に救出するという任務に就いていた。しかしドゥーク伯爵、また彼の暗殺者アサージ・ヴェントレスがジェダイの作戦を阻もうと彼らに忍び寄る…。
この映画が始まった途端に気付く事がある。それは映画『スター・ウォーズ』のどのエピソードの始まりにあった過去とそのエピソードについての説明のテロップがないという事。アニメ版なので基本的な面でも実写と異なる要素があっても良いとは思うのだが、あのオープニングは実写版とは随分と違う物語になることを予測させるものである。監督もジョージ・ルーカスではなく、ルーカスが信頼を置けるデイヴ・フィローニという若い監督にバトンタッチし、本作『クローン・ウォーズ』は『スター・ウォーズ』の世界感を活かした「別物」になっている。ルーカス自身は今回プローデューサーとして制作に関わっている。
『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』はテレビアニメ同様エピソード2『クローンの攻撃』とエピソード3『シスの復讐』のほんの少しの期間が舞台だ。このアニメ版映画は実写版とテレビアニメの物語を基に書かれているため、ストーリーの中にはアナキン・スカイウォーカー、オビ=ワン・ケノービ、ヨーダ、パドメ・アミダラ、ドゥーク伯爵、C-3PO、R2- D2等のお馴染みのキャラクター達も登場する。また今回は実写版にもテレビアニメ版にも登場していなかったアソーカ・タノという少女のジェダイが登場する。彼女はアナキンと行動を共にし、物語の中で活躍する重要なキャラクターだ。
この映画で非常に気になるのは映画を作る工程の作業の粗雑さ。キャラクター達の見た目がカクカクしているのも気になるが、彼らの動きもカクカクしてG.I.ジョーの様なアクションフィギュアを動かしている様に見えてしまう。絵も美しいものではなく、やはり粗いという印象だ。この映画のグラフィックはシンガポールにあるルーカス・スタジオで制作されており、丹精込めて映像が作られたというよりは、1つが終わったらすぐに次、次、次と『いま ここにある風景』の様な中国の大工場の中の風景が脳裏に思い浮かんだ。
映画の上映時間も98分で実写版に比べるとやはりストーリーの規模は随分と小さい。その中で良かった点は、血が映るシーンはないものの、子供向けとも言い難く、特にジャバ・ザ・ハットの叔父のジロ(ドラッグクイーン)がパドメをいじめるシーンが気味が悪い。どうしてジャバの叔父がドラッグクイーンなのかは不明だ。ただ98分は『スター・ウォーズ』にしては短く、物足りなさそうな上映時間だが、この映画に関してはそれが長く感じてしまう。この映像を長い間観るのはなかなか苦痛だ。この物語はテレビアニメの特別編としてテレビで放映するなら話題の作品になるかもしれないが、これは『Xファイル:真実を求めて』の様にわざわざ劇場で観る必要性がない。『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』は秋からアメリカでテレビ放映される新しい『スター・ウォーズ』を楽しむための余興として観たい作品だ。
(岡本太陽)