スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ - 福本次郎

◆変幻自在のカメラワークに独特の色彩感覚と個性豊かな登場人物。そうした映像の断片を見ていると非常に洗練されている。しかしそのスタイルにこだわる余り作品からはダイナミックなパワーが薄れ、陳腐な展開になってしまった。(30点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 変幻自在のカメラワークにスピードあふれるカット、そして独特の色彩感覚と個性豊かな登場人物。そうした映像の断片だけを見ていると非常に洗練されている。しかしそのスタイルにこだわる余り、作品からはダイナミックなパワーが薄れ、ただ「用心棒」のストーリーをなぞるだけの陳腐な展開になってしまった。日本の寒村を舞台にした時代劇風西部劇、その思いつきを映画にしようとするエネルギーには感服するが、もっとオリジナリティのある仕掛けを考えなければ仏作って魂入れずとなってしまう。

 伝説のお宝を巡って平家と源氏が対立する山奥の村に流れ者のガンマンがやってくる。その凄腕を見込んで双方が用心棒にスカウトするが、ガンマンは飲み屋のババアに村の事情を聞かされるうちに一組の母子と出会い、ある決意をする。

 アクションにしては盛り上がりに乏しく、人間像も描けていない。大体、平家の清盛も源氏の義経も、ボスというより少し腕の立つチンピラにしか見えない。もっと権謀術数の中で、駆け引きと裏切り、そしてその果てにガンマンの真の目的が見えてくるというような構成にするべきだろう。源氏平家双方にはお宝を見つけて我が物にするというはっきりとした目的があり、いかにも悪党という分かりやすさであるのに対し、本来主人公であるべきガンマンはそもそも何をしにこの村に来たのか。このガンマンに感情移入できなかったのが最大の欠点だ。

 また、香川照之のひとり芝居や、タランティーノのちゃぶ台返し、さらには石橋貴明のオカマ扮装など、笑いを取ろうとして完全にはずしている。ここまでくるとこの映画自体が喜劇というより悪ふざけではないかと勘ぐりたくなり、付き合わされる観客には悲劇でしかない。名の通った俳優を多数使い、ロケやセットにもカネがかかっている。だが、すべては監督の浪費癖に費やされてしまい、完成した作品は無残な姿をさらしていた。

福本次郎

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