スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師 - 岡本太陽

ジョニー・デップ主演、ティム・バートン最新作(90点)

 1979年に、あるブロードウェイミュージカルが上演された。それはスティーブン・ソンドハイム作詞・作曲、ヒュー・ウィーラー脚本によるオペラ調の『スウィーニー・トッド』という作品だ。非常にダークでユニークな作風が話題になった。この作品は日本でも今年宮本亜門演出により公演された。そしてそのミュージカルがジョニー・デップを主演に迎え『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師(原題:SWEENEY TODD: THE DEMON BARBER OF FLEET STREET)』として、映画化された。これは血生臭い復讐の物語だ。

 時は19世紀、ベンジャミン・パーカーがスウィーニー・トッド(ジョニー・デップ)と名前を替え、船乗りのアンソニー(ジェイミー・キャンベル・バウワー)とロンドンに戻って来るところから物語は始まる。スウィーニーは判事のターピン(アラン・リックマン)に無実の罪を着せられ、15年の間オーストラリアに流刑されていたのだ。ミートパイ屋の上に借りていた昔住んでいた家に戻るが、大家のラヴェット夫人(ヘレナ・ボナム・カーター)はスウィーニーの妻(ローラ・ミシェル・ケリー)が毒を飲んで自殺した事、娘ジョアンナ(ジェイン・ワイズナー)が判事に養育されている事を告げる。そしてスウィーニーは復讐の鬼となる事を誓う。判事を殺す、と。判事に会う機会を作る為に、ラヴェット夫人のミートパイ屋の2階に床屋を開いたスウィーニーは、その腕前から店を大繁盛に導く。そしてその傍ら、彼は客として来る者をカミソリで喉をかき切り、無惨に殺していく。死体の処理はラヴェット夫人の役割だ。彼女は下の店でその死体の肉をパイに詰めミートパイとして売っているのだ。マズいで有名だったラヴェット夫人のミートパイ屋は人肉のおかげで街の大評判になり連日大盛況になる。そして怒りに満ちたスウィーニーは復讐心を燃やし判事がやって来る機会を待ちながら、罪のない客の喉をかき切り続けるのだった…。

 この『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』の監督を務めるのは鬼才ティム・バートン。『シザーハンズ』『エド・ウッド』『スリーピー・ホロウ』『チャーリーとチョコレート工場』『ティム・バートンのコープスブライド』そして今回で彼とジョニー・デップとのコラボレーションは6度目となる。ティム・バートンは常に革新的な映像を作り出す監督だが、今回の作品でもわたしたちに素晴らしい映像を届けてくれている。長い間、真に良質な作品に恵まれなかったティム・バートンだが、この『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』は紛れもなく、ここ10年間では最高の仕上がりになっている。

 作風はファンタジック、そして舞台は19世紀ということで、この『スウィーニー・トッド』 はまるでお伽話の様。しかしながら、ティム・バートン独特のダークでゴシックな雰囲気に包まれている。街の雰囲気も暗い。近年ティム・バートンの作品でここまでダークでゴシックな作品はなかった。おそらく『スリーピー・ホロウ』までさかのぼらなくてはいけないだろう。そしてスティーブン・ソンドハイムによる音楽は映画に壮大さを付け加える。これはティム・バートンの作品が好きな人の為の映画と言っても過言ではない。とにかくこの映画は始まりから終わりまで目が離せない。

 それからこの映画を盛り上げているのはやはり出て来る魅力的なキャラクター達であろう。スウィーニー役のジョニー・デップとラヴェット夫人役のヘレナ・ボナム・カーターはこの作品でゴールデン・グローブ賞にノミネートされるだけあり、良質な演技を披露している。そしてこれは歌を歌いながらという2人にとっても今までにない試みだった。また、この映画の中で特に印象的だったのは『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』のサーシャ・バロン・コーエンと『魔法にかけられて』にも出演しているティモシー・スポールだ。この2人のキャラクターは気持ちが悪い。しかし彼らはこの映画の中でなくてはならない笑い所。演技云々より、いるだけで笑える欠かせないキャラクター達だ。ところで、このサーシャ・バロン・コーエンはグロテスクなイタリア人を演じているのだが、彼に仕える少年トビーがなかなか侮れないキャラクターだ。物語の始めの方ではあまり重要なキャラクターには見えないのだが、彼は実は重要なキャラクターの1人。エド・サンダースがトビーを演じる。

 この『スウィーニー・トッド』は復讐に燃える男が怒りの化身となる物語で、恐ろしく残酷な映像が度々映る。スウィーニーは首をカミソリでかき切って殺人を犯すため、大量の血も視界に入ってしまう。いくらジョニー・デップ好きでも血が嫌いな人にはとても観るに堪え難い作品だ。まして子供が観るとトラウマになってしまうだろう。ファンタジックなミュージカルでありながらこの映画はホラーでもあるのだ。しかしながら、監督はあのティム・バートン。残酷な物語であるにもかかわらず、遊び心に満ち溢れている。確かに血が映るのだが、それは日本のB級映画で見られる様な噴水の様な血飛沫だったり、非現実的なティム・バートンの独特の世界観に基づくものだ。よって、怖い映像でもあり、可笑しいという不思議な映画だ。

 『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』は、人間というものを悲観的に捉えた作品である。復讐の為に人を殺しては人肉入りミートパイを売るという、冗談にも聞こえてしまうストーリーだが、人間がどれだけ醜く残忍な生き物であるかを伝えている。物語の所々に希望が見え隠れするが、それはやはり人間にとっての選択に過ぎず、選択を誤ると結果悲惨な結末を迎えてしまうのである。人肉入りミートパイを作ったり食べたりするシーンは人によっては気分を害してしまうかもしれないが、この映画はティム・バートン作品の傑作の1つ。狂気の渦巻く『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』の世界感を是非御賞味あれ。

岡本太陽

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