ジョバンニの島 - 樺沢 紫苑

「火垂るの墓」を彷彿させる感動作(点数 90点)


(C)JAME

北方領土を舞台にした映画、というのは珍しいと思います。

北方領土の一島である、色丹島。
1945年の敗戦とともに押し寄せるロシア兵。
ロシア占領下の美しい島で、熾烈な運命に巻き込まれていく
2人の兄弟を、幻想的な映像とともに描いた作品。

ポイントは、3つ。
一つ目のポイントは「秘史」(秘密の歴史)です。

最近ロシア、プーチン政権との間で、北方領土の話題が出ていて、
北方領土返還への期待が高まります。

しかし、北方領土といっても北方四島を
スラッと言える人はまずいないでしょう。

私は北海道出身ということもあり、北方領土の話は子供の頃から
聞かされていますし、実際に知床半島からは北方領土を
見たこともあります。
本当に北海道から、目と鼻の先にあるんです。

終戦と同時に、旧ソ連軍が北方領土を占拠した。
という歴史的事実は誰もが知っているでしょうが、
そこに住んでいた日本人がどのような体験をしたのか。

映画やドラマでほとんどの扱われていない「秘史」
と言ってもいいのではないでしょうか?

少なくとも私は、北方領土を舞台にした映画を見たのは
初めてのことで、新しい発見にあふれた、
新鮮な映画に見えました。

ロシアに占領され、島民が拘束されるのかと思いきや
そうではありません。

最初の一年以上は、ロシア人との共存生活が行われます。
学校の校舎は、ロシア人の子供たちと共有され、
校庭でロシア人と日本人の子供たちが鬼ごっこをするシーンは、
とても意外でありとても不思議です。
そして、主人公純平とロシア人少女との初恋が、甘く切ない。

2つ目のポイントは、「自然」。

彼らが住む色丹島は、とても美しい。
海は青く、白い花畑は幻想的です。
木苺などの自然の恵みにもあふれています。

そうした風景描写が素晴らしい。
映像によって、この島の素晴らしさが、全て説明されています。

一方で後半の樺太の雪の寒さの描写がすさまじい。
深々と降る雪。吹き荒れる冷たい風。
見ているだけで寒々としてきます。

一つだけ言えるのは、「自然」平等である、ということ。
日本人にもロシア人にも。

3つ目のポイントは、「兄弟愛」。
「銀河鉄道の夜」のジョバンニとカムパネルラから
名をとられた純平と寛太の兄弟は、「銀河鉄道の夜」を愛読し、
いつも仲良く助けあっています。

2人の兄弟ははなれ離れとなった父親と再開できるのか? 
そして、無事、日本にたどり着けるのか。
とても切ないラストに涙がこぼれました。

脚本・原作は「北の国から」の杉田成道(しげみち)。
声優陣は市村正親(まさちか)、仲間由紀恵、北島三郎と豪華です。

私が見た時は、私以外に2人しか観客がいなくてさびしい限り。
公開週の興行収入ランキングは第17位と残念な結果です。

でも、こういういい映画こそ、
たくさんの人に見てもらいたいですね。

親子で見るのも、とてもいいと思います。

樺沢 紫苑

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