馬は馬主からの大切な預かりものだから、敬意を持って接しなければならず、馬を気持ちよく走らせることを最優先にしろと教え込まれる。映画はジョッキー養成学校の少年たちの成長を通じて、プロになるとはどういうことかを問う。(50点)
まだ夜も明けきらない早朝の厩舎、子どもたちは一心に敷き藁を入れ替え、馬にブラシをかける。少しでも汚れが残っていると容赦なく教官の叱責が飛ぶ。馬は馬主からの大切な預かりものというだけでなく、プライドの高い動物だから、敬意を持って接しなければならない。自分が楽しむより馬を気持ちよく走らせることを最優先にしろと教え込まれる。映画はジョッキー養成学校の少年たちの成長を通じて、プロになるとはどういうことかを問う。
フランス国立の厩務員・騎手養成寄宿学校に入学した新入生たち。肉体的精神的な強さのほかに馬と気持ちを通わせられる繊細さを持っているか、厳しい訓練の過程でその資質を見極められる。初めて馬の背にまたがる子どもから、馬の扱いを心得ている子どもまで、ジョッキーを目指す競争が始まる。
説明的なナレーションや字幕での解説はなく、見る者はいきなり子どもたちと同様に寄宿舎生活に放り込まれるよう。寮の狭い相部屋で朝5時起きの毎日、厩舎での作業、馬を操るためのトレーニングと休む間もない。相手が生き物だけに休日などなく、日常をどこまで馬に捧げられるかを試されているのだ。ジョッキーになれるのはほんの一握り、残りも厩務員や調教師になれるとは限らない。生徒はジョッキーの夢敗れた教官という現実を目の当たりにしながらも、まだ将来に甘い希望を抱いている。14歳にして人生のサバイバルレースに参加する少年少女のあどけなさが痛々しい。
カメラは3人の少年を中心に追う。しかしあくまで傍観者という立場を貫き、彼らの心には踏み込もうとしない。何を考え、その考えがどのように変化していくのかは表情や態度から伺うしかない。また、エピソードに脈絡がなく場面がいきなりポンポンと入れ替わるという編集法はいかがなものか。これでは非常に散漫な印象を受け、前後のつながりが見えてこない。もう少し焦点を絞って、より深く対象に切り込むようなアプローチをしたほうがよかったのではないだろうか。やはり主人公は人間なのだから、その感情の動きをもっと丁寧に描いて欲しかった。
(福本次郎)