ジャンパー - 岡本太陽

ダグ・リーマン監督、ヘイデン・クリステンセン主演の超話題映画がついに公開!!(50点)

 昨年に予告編がリリースされるやいなや、話題を呼んでいた『ボーン・アイデンティティ』や『Mr. & Mrs. スミス』のダグ・リーマンが監督を務めるある映画がある。主演のヘイデン・クリステンセンがまるでアメコミのキャラの様にテレポートし、スフィンクスの上で日光浴を楽しむ映像は衝撃的だ。この映画のタイトルは『ジャンパー(原題:JUMPER)』。もちろんテレポートする人物だけが出て来ても映画にはならないので、そのテレポートできる主人公を追う者も存在するという謎に包まれた作品だ。この作品は現在、週間興行収入で1位に輝いている。

 ミシガン州に住む15歳のデヴィッドは母が5歳の時に家を出て行って以来、友達もおらず父との二人暮らしをうんざりしながら続けていた。それでも同級生のミリーに思いを寄せており、ある日スノードームを彼女にプレゼントする。しかしそれをからかう者がおり、プレゼントしたスノードームを凍った川に投げられてしまう。ミリーはそれを取りに行こうとするデヴィッドを制止するが、デヴィッドは恐る恐る氷上を歩き、スノードームを手に入れる。が、その時氷が割れ、デヴィッドは川の中へ。そして次の瞬間、彼は大量の川の水と共に学校の図書館へテレポートしてしまう。自分に不思議な能力があると確信したデヴィッドは、その晩1人でニューヨーク行きを決意する。デヴィッドはテレポート能力「ジャンプ」を利用し、8年間銀行から金を盗み悠々自適に暮らしていたが、心の中はいつも孤独でいっぱいだった。そんな彼の前にある日短い白髪のローランドが現れ…。

 この映画の出演者にはなかなか豪華な顔ぶれが揃った。まず主人公デヴィッドを演じる『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』『スター・ウォーズエピソード3/シスの復讐』のヘイデン・クリステンセンの他、デヴィッドを追うローランドに『パルプ・フィクション』のサミュエル・L・ジャクソン、デヴィッドと同じ能力を持ったグリフィンに『リトルダンサー』のジェイミー・ベル、そしてデヴィッドの母メアリーに『運命の女』のダイアン・レイン等が起用されている。デヴィッドが想いを寄せる女の子ミリーをテレビシリーズ『The OC』等で人気を集めるレイチェル・ビルソンが演じるが、彼女の少女の頃を演じた『テラビシアにかける橋』のアナソフィア・ロブの方が俄然可愛かった様な気が…。

 この『ジャンパー』、最新のVFXを駆使し、場所から場所へと一瞬にして移動する「ジャンパー」達の活躍が目に新しいが、サム・ライミの『スパイダーマン』が2002年にスクリーンに現れた時の様な驚きと興奮を妨げたのがこの脚本なのである。まず簡単に説明すると、ストーリーはスティーヴン・グールドの小説『ジャンパー跳ぶ少年』を原作に大幅に脚色されたもので、空間移動を自在に行えるジャンパー達に対し、彼らを抹殺する使命を与えられたローランドが所属するパラディンが登場する。この相対するジャンパーとパラディンは数千年前から存在している様で、ジャンパーは幼少期に主にジャンプ能力に気付くのだが、パラディンの存在により、成人まで生きられるジャンパーは少ないという。

 そこで、この脚本での失敗は何だったかというと、説明があまりにも不十分だった点が一番に挙げられる。観客は『どうしてジャンプ能力が身に付くのか?』『パラディンは何故ジャンパーを抹殺しなければならないのか?』等の最も素朴な疑問を残したままエンディングを迎える事となるのだ。続編制作を頭に入れての第1作目だが、『スパイダーマン』でもどうやってスパイダーマンになったかは説明されていたし、『マトリックス』でもマトリックスとは何なのかは説明されていた。説明無しでは観客の興味を促すのは非常に難しいのだ。例え視覚的に面白くてもストーリーに退屈してしまう。

 またキャラクターの描き方も非常に浅い。主人公は5歳の時に母親に突然理由もなく出て行かれ、それ以来人が変わってしまった父と10年もの間暮らし、その間、友達もおらず孤独で陰鬱な日々を過ごしていた。ニューヨークに出てからもいつも1人。ジャンプ先で出会った女性と一夜を共にする事はできるものの、孤独なのだ。そんな彼の心の闇にあまり焦点が当てられないままストーリーが進行してしまうため、観るものは主人公に共感出来ないのだ。これは非常に致命的である。普段この様な大作映画の場合、2時間を越えるものになるのが主流であるが、この作品はなんと 88分。上映時間の短さのせいもあると思うが、主人公を筆頭に登場人物の描写が不完全である。

 それでも面白かったキャラクターはジェイミー・ベル演じるグリフィン。彼は同じ能力を持つデヴィッドに興味を持ち、ジャンパーは1人ではない事を忠告する。彼の役はコミカルで且つミステリアス。彼もまた謎の多い役だ。しかし、主人公でないゆえに、その謎はむしろ心地よい。続編に大いに期待したくなるキャラクターである。それからダイアン・レイン扮するデヴィッドの母も非常に謎の多い役だ。彼女の正体が何なのかはストーリー後半に明らかになるが、この役も続編ではより焦点を当てられるだろう。

 8年もの間、銀行から金を盗む事で生計を立てられるのか?や、仕事なしでニューヨークの高級マンションに住む事ができるのか?等の現実的な疑問の他、ジャンパーとパラディンの説明の不十分さに加え、キャラクターに深みがないという点等、多くの問題を抱えた本作『ジャンパー』。多くの人にとって期待を裏切る作品になることは免れない。続編で、起死回生できるかに全てが掛かっていると言えよう。

岡本太陽

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