タランティーノらしい一作(点数 80点)
クエンティン・タランティーノ監督の『ジャンゴ』を見ました。
あいかわらずの倫理無視。激しいバイオレンスの暴走列車のような映画で、
実にタランティーノ監督らしい、作品に仕上がっています(笑)。
『イングロリアス・バスターズ』の「ナチスはぶっ殺していい」を、
「差別主義者はぶっころしていい」に置き換えたような・・・。
『イングロリアス』では、ブラット・ピットを主要な配役にそえていましたが、
今回はレオナルド・ディカプリオが重要な役を演じています。
このディカプリオの悪役ぶりは、なかなかの見ものです。
「規範を示す」のが西部劇。「賞金稼ぎ」は、殺してもいいという
法律のルールをうまく逆用しながら、
熾烈を極めるガンファイトを正当化していく、
「暴力の口実」を匠に操るストーリーテリングは、
タランティーならでは。
黒人のガンマン。西部劇でありながら、
西部から舞台が南部のミシシッピ州にうつっていくという、
非常に斬新で目新しい映画ということはいえるでしょう。
私は、タランティーノ作品は正直好きではありません。
本作においても、観客を不快に陥れる倫理上かなり危ない描写が
何箇所も入っています。
しかしながら、2時間45分もの長尺の映画を、
最後まで退屈させることなく「殺すか殺されるか」
という手に汗握るサスペンスとして描いた演出力は、
評価せざるを得ないでしょう。
タランティーノ監督が、カメオ出演というか、
セリフもある印象的な役として登場しているのですが、
場内からは笑いも何の反応も起きませんでした。
みんな気づかなかったのかなあ・・・。
暴力描写がどぎついので万人におすすめはしませんが、
過去のタランティーノ作品が好きな人は、
大いに楽しめるでしょう。
(樺沢 紫苑)