ブラッド・ピット主演最新作、伝説のアウトロー:ジェシー・ジェームズ映画(50点)
アメリカの西部開拓時代にウッディ・ガスリーによりロビンフッドと比較され、伝説と化したあるアウトローがいる。彼の名前はジェシー・ジェームズ。名前を発音した時に、非常に名前と名字がしっくりくる名前だ。彼は銀行や列車強盗を繰り返す犯罪者集団を結成していた。彼には10,000ドルの懸賞金がかけられ、最終的には仲間のロバート・フォード(ボブ・フォード)に銃で頭を打ち抜かれて暗殺されてしまう。ロバートが強盗集団に入ってからの、ジェシーとロバートに焦点を当てた『ジェシー・ジェームズの暗殺』という映画が公開になった。
この作品の主役ジェシー・ジェームズを演じたのはブラッド・ピット。夏に『オーシャンズ13』が公開されて、すぐにこの作品も公開になった。彼は『ジェシー・ジェームズの暗殺』でヴェネチア国際映画祭最優秀男優賞を獲得した。ブラッド・ピットはいつ見てもカッコいいが、この映画の中では寧ろ、ロバート・フォード役のケイシー・アフレックの方が演技的にはうまかったような気がする。彼はベン・アフレックの弟だが、着実にキャリアを重ねているので、最近ではあまり「ベン・アフレックの弟」とも言われなくなってきた。先ほど『オーシャンズ13』が公開されたことを記したが、ケイシー・アフレックもブラッド・ピット同様『オーシャンズ11』からずっとそのシリーズに出演している。今後はベン・アフレックが監督する『ゴーン・ベイビー・ゴーン』に主演する。なかなか良い演技をする俳優である。『ジェシー・ジェームズの暗殺』のその他出演者にはサム・シェパードやメアリー=ルイーズ・パーカー等がいる。
そしてこの作品の監督にはニュージーランド出身のアンドリュー・ドミニクが起用されている。彼はこの作品の脚本も手掛けている。アンドリュー・ドミニクにとって『ジェシー・ジェームズの暗殺』は第2作目の監督作品なのだが、わたしは彼が初監督したエリック・バナ主演の『チョッパー・リード/史上最凶の殺人鬼』は未見である。そのうち観てみようと思う。
この『ジェシー・ジェームズの暗殺』は、落ち着いたストーリーで悪くはないのだが、わたしはとても長く感じた。テンポが悪く、全体的なストーリーの流れが、エンターテイメント性には欠ける作品であった。
また、この映画で印象的だったのが、闇や黒である。特にジェシー・ジェームズはほとんど黒を身に纏っているので、彼がわずかな光が当たる闇の中にいると、レンブラントの肖像画の様に黒が印象的に映るのだ。それからジェシー・ジェームズが金色の麦畑で沈みゆく太陽を見つめたりするシーンがあるのだが、それも絵の様に綺麗だ。ジェシーは自分が殺される運命と知ってか、どこか切なさを感じさせる表情をしていて哀愁を漂わせる。ブラッド・ピット。切ない表情の似合う俳優である。
ケイシー・アフレック扮するロバート・フォードはジェシー・ジェームズにずっと憧れていたのだが、彼がジェシーに向ける眼差しはまさにファンそのもの。いわゆる追っかけの様なものだ。10代の女の子がジャニーズのアイドルのポスターを部屋の壁に貼って毎日眺めて満足するのと同じで、ロバート・フォードもジェシーについての小説をベッドの下に隠し、それを大事そうに見つめる。そんなロバートがジェシーを殺す事になるとは運命とは皮肉なものだ。
『ジェシー・ジェームズの暗殺』は雰囲気も好きだったし、良いシーンはいくつもあるものの、結局のところアンドリュー・ドミニクではない人が撮った方が良かった様に思う。彼は脚本も手掛けているが、脚本自体はおそらく悪くないだろう。むしろ、ジェシー・ジェームズのストーリーをただのヒーローものにしなかったという点等、なかなか脚本は良かったはずだ。監督の力量の足りなさを感じた作品である。惜しい。
(岡本太陽)