シークレット - 福本次郎

◆ある殺人事件の担当になった刑事が捜査を進めていくうちに、犯人は妻ではという疑念が胸に巣食い始める。真相を追うほどに逆に追い詰められ、苛立ちが焦燥に、怒りが恐怖に変わっていく主人公の心理描写が非常に繊細でリアルだ。(50点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 交通事故の被害者はなぜプライベートを詳しく知っているのか。美しい妻は何を隠しているのか。そして謎の電話の主とどこからか自分を見張っている目。ある殺人事件の担当になった刑事が捜査を進めていくうちに、犯人は妻ではないかという思いが胸に巣食い始める。やがてその疑念は確信になり、犯行の目的がわからぬまま彼女をかばおうとして苦悩にさいなまれて行く。真相を追うほどに逆に追い詰められ、苛立ちが焦燥に、怒りが恐怖に変わっていく主人公の心理描写が非常に繊細でリアルだ。

 ヤミ金融業者が刺殺され、現場に到着したキム刑事は犯人の遺留品と思われるイヤリングやボタンを発見、それらが彼の妻・ジヨンのものと気づいて隠ぺいする。一方、被害者の兄・ジャッカルはヤクザのメンツにかけて警察より先に犯人を捕まえるとキムに宣告する。

 ジャッカルも自分もジヨンを疑っていることを、キムは彼女に告げられない。ジヨンもまた、なぜ犯行現場にいたかその理由を話さない。そうしているうちに新たな証拠が見つかり、ジャッカルの手が伸びてくる。さらに目撃者の証言や無名の脅迫者などが登場し、先手を打ったつもりがすべて裏目に出てしまうキムの絶望がこれでもかと繰り返される。もはや神経症のようなキムの疲れ切った表情は鬼気迫るものがあり、感情を逆なでするような短いカットの積み重ねが、見る者の感覚をキムが味わう憔悴に同調させるという、クールな映像と共にシャープな演出だった。

 警察内部の裏切り者、事件の裏で消えたドラッグ、意外な真犯人。物語は二転三転し、キム夫婦の封印された過去と秘密も暴きだしていく。ただ、事件を仕組んだ男がことの真相を明らかにするが、あまりにも説明的な割には動機に説得力が乏しい。このあたり、もう少し緻密な構成にしていれば上質なミステリーに仕上がっていたのだが。。。

福本次郎

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