◆細かいことを考えずに頭を空っぽにして漠然として観れる(70点)
浮浪者スミス(クライヴ・オーウェン)がギャングに追われている妊婦を助けるや、すぐさまギャング団のボスであるハーツ(ポール・ジアマッティ)の手下たちが続々と現れ、凄まじい銃撃戦を繰り広げる。妊婦はその場で産気づいて出産するが、流れ弾を喰らって死亡する。スミスは赤ん坊を抱いて追ってくる敵たちから逃げて、知り合いの娼婦ドンナ(モニカ・ベルッチ)の居場所にたどり着く。ハーツは赤ん坊の命を狙って多くの手下を従えてスミスを追跡するが……。
本作の見せ場は当然の如く銃撃戦であり、殆どのシーンで銃弾が飛び交っているという撃ちっ放しがユニークだ。とにかく銃撃戦の描き方はハイテンションかつクレイジーな雰囲気を存分に醸し出しており、キレ味は抜群で迫力満点。しかもスタイリッシュな映像に仕上がっている点が魅力的だ。使用されるロックビートが映像と巧く絡み合っており、これがテンションをより一層高めてノリを良くさせている。劇中では珍プレー好プレー的銃撃戦が観られ、これがかなり面白い。まずは、スミスとドンナが性行為の最中に敵が二人を狙撃し、抱き合いながらゴロゴロと転がって銃弾を避けて応戦するシーンは、おバカコメディーさながらの面白さをとことん発揮していて強烈なインパクトを与える。次に後半で観られるスカイダイビングをしながらの空中銃撃戦もユニークであり、こちらも一度観たら忘れられないほどの強烈なインパクトを与える。クライヴ・オーウェンが体当たりの鋭いアクションを披露しており、男臭さをほんのりと漂わせていてカッコいい。
銃撃戦だけでなく、小道具も注目すべきポイントである。アイデアをしっかりと活かせた使い方は素直に巧いと言い切れる。中でも頻繁に登場するのが人参である。これはスミスがただ食べるだけでなく、武器としても使用している。人参を敵の目に突き刺したりするシーンは、とにかく観る者を圧倒させること間違いなしだ。観ているとツッコミを入れたくなるほどバカらしいと思えるが、しっかりと面白さに繋がっているのでそれで良いのだ。
ストーリーはあってないようなもの。上映時間は86分と短め。出来栄えは完全なB級娯楽アクション作品。細かいことを考えずに頭を空っぽにして漠然として観れるという気楽で他愛もない作品と言いたい。今までのアクション映画で描かれることのなかった珍プレー好プレー的銃撃戦と人参の面白可笑しい使い方を思いっきり堪能することをオススメしたい。本作のようなバカになりきったB級娯楽アクション作品は、本当に面白くて最高だ。
(佐々木貴之)