大転換が唐突に訪れるあたりかえって潔さすら感じた。(点数 50点)
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記憶喪失、怪しげなバイト、何か秘密がありげな田舎の町…。誰がウ
ソをついていて、誰が騙されているのか、閉鎖空間で繰り広げられる
テンポの速い会話と俳優たちの大仰な演技は小劇団のステージの熱気
をそのままスクリーンに再現する。伏線が一切なく突然状況が反転す
るドンデン返しの連続は一瞬の気の緩みも許さず、強引とも思える語
り口は見る者をグイグイと物語に引き込んでいく。まるで停滞を恐れ
るかのような息もつかせぬ展開は、欠点も含めて演劇を見ている気分
だった。
【ネタバレ注意】
高給に引かれ廃工場での胡散臭い実験のモニターになった戸部は、3人
の被験者と共に試験官から順次課題を与えられていく。さまざまな刺
激の中で失われていた戸部の記憶が少しずつ戻り始める。
4人はあの手この手で戸部の記憶を蘇らせようとするが、廃工場には彼
ら以外にもミスター山下なる人物が裏で糸を引いている。また、全員
かおりという共通の女を知っているが、なぜか彼女はそれぞれに違う
顔を見せている。そして謎が新たな謎を呼び、当初の計画は狂い始め、
全く先が読めなくなる。
正道を行くミステリーならば、登場人物が意味ありげな表情を浮かべ
たり小道具を使って観客にさりげなく予感を抱かせるのだが、そうい
ったタメは一切なく、大転換が唐突に訪れるあたりかえって潔さすら
感じた。
(福本次郎)