シャッター アイランド - 山口拓朗

シャッター アイランド

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◆謎解きのプロットや結末に新味はないものの、「トラウマ」という人間心理を利用したミステリアスなストーリー展開と、スコセッシらしい力強い演出力が功を奏し、作品自体は手堅くまとまっている(75点)

 「ギャング・オブ・ニューヨーク」(2002年)「アビエイター」(2004年)「ディパーテッド」(2006年)で3度コンビを組んだマーティン・スコセッシ監督×レオナルド・ディカプリオが、4度目のコンビ作品「シャッター アイランド」を完成させた。ふたりが挑んだのは「精神障害×犯罪者×孤島」をキーワードにしたサスペンス&ミステリー。「ミスティック・リバー」原作者デニス・ルヘインのミステリー小説を映画化したものだ。

 1950年代、連邦保安官のテディ・ダニエルズ(レオナルド・ディカプリオ)は、新しい相棒のチャック(マーク・ラファロ)と共に、精神障害をもつ犯罪者だけを収容する孤島「シャッター アイランド」へやって来た。わが子3人を溺死させた罪で収容されているレイチェル・ソランド(エミリー・モーティマー)が、突如、鍵のかかった部屋から消えてしまったというのだ。島から外に出た形跡もない。手がかりは、部屋に残された「4の法則」と書かれた1枚のメモだけだった……。

 ネタバレ厳禁のミステリーでも、語れる部分が少しくらいあるものだが、この映画に関しては、あらゆることが語れない(語りづらい)。つまり、ストーリーのディテールまでもがミステリーの端役を担っているということだ。

 ディカプリオ演じる連邦保安官のテディは、冒頭、この島に到着した当初から“何かがおかしい”と感じるが、観客もほとんどタイムラグなくテディの視線と同化する。“何かがおかしい”と感じるテディと観客。どちらがいち早く謎を解くか……。その勝負に参加することが、この映画の正しい楽しみ方である。

 捜査が進むに連れて、患者、医師、警備員……など、ありとあらゆる人物が怪しく見えてくる。テディが悩まされる偏頭痛、人体○○のよからぬウワサ、医師の許可なく入ることができない禁断の病棟、波頭砕ける断崖脇にたたずむ灯台、島内の森の中にある墓場、時間を追うごとにひどくなるテディの悪夢。観客の警戒心をくすぐる要素が次々と登場する展開は、一時たりとも目が離せない。

 謎解きのプロットや結末に新味はないものの、「トラウマ」という人間心理を利用したミステリアスなストーリー展開と、スコセッシらしい力強い演出力が功を奏し、作品自体は手堅くまとまっている。クラシック映画をお手本にしたというゴシック調の絵作りに加え、絶海の孤島をまるでひとつの生命体のように描いた描写力も秀逸。あらゆる謎が解けたあとに、テディが相棒のチャックが言葉を交わすラストシークエンスも「とどめの一撃」として観客に深い余韻を与える。

 本作「シャッター アイランド」では、違和感のないセリフ回しにこだわった「超日本語吹替版」なるものが用意されているが、これは「観客が謎解き(映像)に集中できるように」という配給会社の配慮によるもの。「吹替だと映画の雰囲気が壊れる」という意見もあるとは思うが、集中力を要する謎解き映画との親和性を考えると、さほど悪いサービスとは思えない。むしろ「字幕はどうも苦手で……」と洋画を敬遠していた客層に、劇場まで足を運ばせる訴求力を評価すべきではないだろうか。

 謎が解けずに徐々に疲弊、混乱していく難役をこなすディカプリオは、かつての「レオ様」イメージとは一線を画し、役者として一皮剥けた繊細な演技を披露している。巨匠監督×スーパースターの相思相愛は、この先もしばらくまだ続きそうだ。

山口拓朗

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