映画館が主役(点数 95点)
(C)2015 シネマの天使製作委員会
実際に閉館していく映画館をフィルムに残したいという強い意志からうまれた作品です。
本作の撮影舞台は、広島県福山市にあった日本最古の映画館「シネフク大黒座」。なんと! 122年続いた映画館なんです。
営業風景から、壊されていくところまで、すべてが描かれ、ラストでは、涙がとまりませんでした。
この作品の主役は映画館。「映画館で映画を見ること」の素晴らしさが描かれています。
老舗映画館の大黒座が閉館することになりました。新入社員の明日香(藤原令子)は、館内で不思議な老人と出会いますが、彼は謎の言葉を残し、忽然と姿を消してしまいます。
バーテンダーのアキラ(本郷奏多)は、いつか自分の映画を作りたいと夢見ています。
いろいろなひとが閉館を惜しんでいますが、閉館の日々は刻々と近づいてきて……。
登場人物が問うように、 いつから映画館が特別な場所でなくなったのでしょうか?
レンタルビデオやDVDが映画館を脅かし、動画がとどめを刺したのかもしれません。
いつでも、どこでも好きなだけ、映画が楽しめる手軽さ。
確かに便利です。
だけど、映画館の空気や雰囲気やドキドキ感は、薄まってしまいました。
もっと濃密だったんです、昔は。
作品の中で、語られるように映画館は「教会」であり、魂の救いの場でもあったのです。
どんどん映画館が閉館し、壊されていきます。あとに続くのは、どこか似通った空気をまとったシネコンです。
快適に映画が楽しめるけれど、懺悔する気分にはなれません。
時代は、変わっていきます。
永遠のものなどありません。
でも、この作品を見ていると映画館は残ってほしいと切望してしまいました。
やっぱり、映画館で映画を見ることは、代えがたい楽しみだと再認識させてくれる作品です。
(小泉 浩子)