ザ・レイド - 小梶勝男

銃撃戦と格闘技が見事に融合したインドネシア産のアクション。狭いビル内の設定をうまく使った演出も素晴らしく、傑作と言っていい(点数 90点)。


(C) MMXI PT.MERANTAU FILMS

銃撃戦と格闘アクションは本来、相性のいいものではない。
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲」でジェット・リーふんする黄飛鴻が銃弾を着物の裾でさばいたり、「カンフー・ハッスル」でブルース・リャンふんする火雲邪神がピストルから発射された玉を指でつまみとったりした例はあるが、普通はいくら格闘技が強くても、銃で撃たれてはひとたまりもない。
だからこそ、クンフー映画では、なぜか銃は使われず、素手か、銃以外の武器での戦いが描かれるのだ。

アンディ・ラウの「新少林寺」なんて、クンフー映画の世界に銃撃を持ち込んだため、少林寺の僧侶たちが次々とほぼ無抵抗で撃ち殺されるような、悲惨な映画になってしまった。
クンフー映画という神話的世界は、銃というリアリズムを持ち込んだとたんに、崩壊してしまうのである。

ところが、このインドネシア映画「ザ・レイド」では、銃撃戦と格闘技が、見事に融合している。
高層アパートの中で、シチュエーションに応じて、銃撃戦と格闘アクションを使い分けているのだ。
格闘で倒した相手を銃で撃つというような、格闘と銃撃との連携も見せる。
もちろん、今までも銃と格闘技の組み合わせはあったが、それが全編で、これほど巧みに展開されたことはなかっただろう。

舞台はジャカルタのスラム街。麻薬王が支配する30階建てのビルに、ジャカルタ警察のSWATチームが突入する。
それは急襲のはずだったが、麻薬王には筒抜けだった。
ビルの住人はほとんどが凶悪な犯罪者で、SWATチーム対住人たちの壮絶な戦いが繰り広げられる。

SWATの隊員たちは銃やナイフ、爆薬、そしてインドネシアの伝統武術シラットを武器に戦うが、アパートの住民たちは無数にいて、倒しても、倒しても、襲いかかってくる。ビルの中は薄暗く、閉塞感があり、なかなか脱出できない。
限定された舞台といい、おそらく麻薬で感覚がマヒしているのだろう、全く死を恐れずに襲ってくる住民たちといい、まるでジョージ・A・ロメロの「ゾンビ」で、生ける屍に追いつめられていくような恐怖がある。

一方で、主人公を演じるイコ・ウワイスが、次々と襲いかかる敵を倒しながら狭い通路を進んでいく場面や、ビルの中に麻薬製造所があるという設定などは、ブルース・リーの「燃えよドラゴン」を思わせる。

「ゾンビ」プラス「燃えよドラゴン」という、70年代を代表する傑作の合体が、つまらないわけはない。

ウワイスや、悪役を演じたヤヤン・ルヒアンは、これからが楽しみ。
アクション映画のスターになって、よりすごいアクションを見せて欲しい。
また、この作品をきっかけに、インドネシア映画という、我々のほとんど知らない作品群が、日本にどんどん入ってきてくれないかとも思う。銃撃と格闘アクションの融合は、ハリウッドのアクションを変え、さらには、アクション映画史を変えるかも知れない。
ストーリーが今一つ練られていないし、トニー・ジャーの「マッハ!」を見たときほどの衝撃度はないが、それでもアクション映画の傑作だと思う。

小梶勝男

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