ザ・ライト -エクソシストの真実- - 樺沢 紫苑

「何か気軽にホラー映画でも見たい」と娯楽目的の軽い気持ちで足を運ぶと期待はずれになるだろう。(点数 90点)


(C)2010 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

アンソニー・ホプキンス主演の映画『ザ・ライト -エクソシストの真実-』がかなり良かった。

予告編はB級ホラーのテイストが滲んでいて不安半分だったが、さすがにアンソニー・ホプキンスが作品を選んでいるだけあって、
単なるホラー映画ではない、しっかりとした人間描写のある重厚なドラマを楽しめた。

主人公のマイケルは、神学校を卒業したものの、神への信仰を持てず、神父となる宣誓を辞退しようとしていた。
教員の神父から、とりあえずエクソシズム(悪魔祓い)の講習会を受けに、バチカンに行けと言われ、言われるままにローマに飛ぶ。
そこで、悪魔と戦うエクソシスト(エクソシズムを行う人)の姿を目の当たりにする。

悪魔なんかいるはずがない。エクソシストなんか偽物。
多くの人はそう思っているはずだが、主人公のマイケルもそうした「疑い」のスタンスでエクソシストと関わっていくので、感情移入しやすく、映画に引きこまれていく。

この映画で良かったのは、何かこけおどし的な恐ろしいシーンがほとんどないこと。

悪魔払いの儀式では、映画『エクソシスト』と同様に、悪魔が心理攻撃を次々と仕掛けてくる。

その心理描写をしっかりと見せていくスタンスがいいし、悪魔の憑依を、ほとんどん役者の演技力でリアルに再現しているので引き込まれる。

映画の前半は、悪魔が存在するかとか、エクソシストは本物かとか、そういう興味で引っ張っていくが、映画の後半になると、悪魔とかどうでもよくなっていく。

悪魔はマイケルに、人に言われたくないこと、自分のネガティブな部分、心の弱み、幼少期のトラウマなどを次々と浴びせ、マイケルの心を折ろうとする。

人間というのは、そうした自分の弱点、弱みと直面し、それを乗り越えないと成長できない。
そして、父親殺し(父親との心理的問題の解決)なしには大人になれない。

悪魔と闘いながら、そうした「自分の心の弱さ」と闘いはじめるマイケル。
敵は悪魔と思っていたが、本当の敵は「自分の心の弱さ」だった、という心理劇にフォーカスされていくのだ。

そう、映画『エクソシスト』が、正にそういう映画であった。

本作は、映画『エクソシスト』を明らかに意識して作っているが、良い意味で、『エクソシスト』の最も重要なエッセンスをしっかりと継承している。
つまり、映画『エクソシスト』に対して、十分に敬意が払われている点が、『エクソシスト』ファンの私としては、非常にうれしかった。

映画『エクソシスト』が好きな人。
悪魔や悪魔祓いに関心がある人。
心理的に重厚なドラマが好きな人。

以上のどれかに当てはまる人は、おもしろく見られると思うが、「何か気軽にホラー映画でも見たい」と娯楽目的の軽い気持ちで足を
運ぶと期待はずれになるだろう。

『アレキサンドリア』と同様で、あまり評判にはなっていないが、見逃さないで劇場でみられて良かった、と思った一本である。

樺沢 紫苑

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