ザ・ライト エクソシストの真実 - 小梶勝男

事実を基本にしたノン・フィクション・ホラー。前半、エクソシスト養成講座や悪魔払いの現場がリアルに描かれ、興味深い。後半は普通のホラー映画になってしまって残念(70点)


(C) 2010 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

エクソシストについて書いた2冊の本がある。
トレイシー・ウイルキンソン「バチカン・エクソシスト」と、島村菜津「エクソシスト急募」だ。
ヨーロッパで近年、悪魔払いの需要が増え、バチカンはエクソシストを増やそうとし、イタリアの大学では養成講座が開かれた。
イタリアを中心に、現代も悪魔払いは多くの人々に「現実」と見なされている。
2冊の本はほぼ同じ内容だが、衝撃的なのは、どちらもノン・フィクション、つまり事実だということだ。

本作の原案となっているのは、フリーライターのマット・バグリオが書いた同名のノン・フィクションだが、むしろそれよりも、「バチカン・エクソシスト」と「エクソシスト急募」の内容がドラマ化されているような印象を受けた。
エクソシストという言葉を一般に知らしめたウィリアム・フリードキンの名作「エクソシスト」(1973)は、基になる事実はあっても殆どフィクションだったが、本作は、あくまでも「事実を基本とした」ドラマとして見なければならない。
単なるオカルトやホラー映画として見ると、派手な恐怖シーンが少ないのでがっかりするかも知れない。

主人公は 信仰に疑いを持つ神学生(コリン・オドノヒュー)だ。悪魔払いの講習会を受けるためバチカンへ派遣され、伝説的なエクソシスト(アンソニー・ホプキンス)と出会い、悪魔の存在を示す恐るべき現象に直面する。
観客は主人公とともに、エクソシスト養成講座や、ベテラン・エクソシストのカリスマ性といかがわしさ、本物の悪魔憑きなのか、精神病なのか判然としない悪魔払いの混沌とした現場などを体験していく。
それがとても面白い。
「バチカン・エクソシスト」や「エクソシスト急募」を読んだ人には、あの内容がどのように映像化されているか、非常に興味深いだろう。

ミカエル・ハフストロームの演出は、フリードキンのように強烈でドラマチックではない。
事実を基本にした映画としての節度を保っているように思える。
その節度の保ち方が絶妙で、前半は、ドラマとしての分かりやすさと、ノン・フィクションとしての面白さとのバランスが、とてもいい。
「パラノーマル・アクティビティ」(2007)や「フォース・カインド」(2009)のようなフェイク・ドキュメンタリーと違い、きちんと劇映画として撮っているのだが、事実に基づいているということを常に観客に意識させるリアルさは、ノン・フィクション・ホラーとでも呼びたくなる。

ベテランのエクソシストを演じるアンソニー・ホプキンスは、やはりうまい。
貫禄も十分だが、同時にインチキ臭さも感じさせ、悪魔憑きなのか、精神病なのか、判然としない中で、それでも目の前の信者を救うため悪魔払いを続ける男の秘めた迷いや孤独など、微妙な感情まで実に豊かに表現している。

だが、実にリアルだった前半に比べ、主人公が悪魔の存在を確信する後半は、次第に普通のホラー映画になっていった。
悪魔憑きか精神病か分からないという懐疑的態度が緊張を保っていたのだが、映画が悪魔の実在を認めてしまうと、その緊張の糸も切れてしまう。
ドラマが盛り上がる一方で、リアリティは薄くなってしまった。
それでもノン・フィクション・ホラーとして、かなり見応えのある作品だと思う。

小梶勝男

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