ザ・ホード 死霊の大群 - 福本次郎

◆いかに残酷に倒しまくるかを競うかつてのゾンビ映画と比較して、ゾンビに素手の格闘を挑むところが目新しい。ゾンビ相手に洗練されたマーシャルアーツを見せる登場人物の身のこなしには、格闘ゲームのような爽快感を覚える。(50点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 十数発の銃弾を撃ち込んでもひるまないゾンビに対して、パンチやキックを見舞った上に関節技で首をへし折ろうとする。いかに残酷に倒しまくるかを競うかつてのゾンビ映画と比較して、ゾンビに素手の格闘を挑むところが目新しい。ゾンビたちも昔ながらの動きの鈍い種族とは違い、格闘技こそ身につけていないもののいくら殴られても蹴られてもすぐに反撃する打たれ強さと敏捷さを発揮する。対ゾンビ戦法としては無駄の多い闘い方だが、数体のゾンビ相手に洗練されたマーシャルアーツを見せるギャングの用心棒や女刑事の身のこなしには、格闘ゲームのような爽快感を覚える。

 刑事の一人がナイジェリアギャングに殺され、復讐を誓った仲間の刑事たちはギャングのアジトを急襲するが、あえなく捕えられてしまう。ところがいつの間にかアジトの周りはゾンビに包囲され、建物内にいたゾンビたちも人間に襲い掛かってくる。

 刑事の惨殺死体と葬儀、その場で交わされる同僚の友情と裏切り、仇討ちのために武装してギャングのアジトに潜入する冒頭の10数分ほどは、派手な殺戮や爆破といったバイオレンスを売り物にしたクライムアクションを思わせる雰囲気だ。それがいきなりゾンビの登場、この何の説明も伏線もない唐突さがかえって潔く新鮮に映る。そしてゾンビ映画の定石通り、人間がゾンビの包囲網から安全地帯に逃げる過程でゾンビを破壊しまくる様子が延々と描写される。なかでもウェスという刑事が自動車の屋根に追い詰められ無数のゾンビが手を伸ばしてくる中孤軍奮闘する姿は、地獄の業火に焼かれる罪びとのごとき激しくも美しいシーンだった。

 憎しみ合っていた刑事たちとギャングたちは、生き残るために共闘関係を結ぶ。しかし、刑事同士の感情にしこりがあり、ギャング兄弟も近親憎悪を抱いている。ゾンビの危機が目の前に迫っているときはみな協力して立ち向かうが、少し考える余裕ができると疑心暗鬼が芽生え抑えていた鬱憤が破裂しそうになる。血と肉片が飛び散る凄惨な映像の中で、そんな人間の心の襞が実に繊細に描かれていた。

福本次郎

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